私は1976年生まれの「団塊ジュニア」世代。バブルのうたげを謳歌することなく、就職は超氷河期、社会に出てからもずっと「失われた20年」を過ごしてきた。

 この20年の間に、かつて世界を席巻した日本の家電メーカーは、中国や韓国をはじめとする海外勢に負けていった。敗因は何か、どのように勝負をしていれば勝てたのか。強い興味を持って調べていた時、大きなヒントを得たのが『パラノイアだけが生き残る』だ。

 日本勢がメモリー事業で世界に攻勢をかける中、米半導体大手のインテルは当時の主力事業から撤退し、大半のリソースをマイクロプロセッサーに集中させた。結果的にこの決断が同社の今の地位を築くことになった。そして、この判断を下したのが本書の著者アンドリュー・S・グローブ氏だ。彼はインテルをグローバル企業に育て上げ、現在もシリコンバレーの経営者から尊敬を集めている。本書は当時の彼の体験に基づいた内容で構成されている。

 多くの経営者が、主力事業を撤退し、新たな事業にリソースを集中させるような大胆な決断を下せずにいる。そうして、かつて繁栄した企業は時代や産業構造の変化にのまれて消えていく。

 その中で、著者はなぜ大きな変化の予兆を感じ、適応することができたのか。“変化の兆し”が本当に大きな流れなのか、そうではないのかを、どのように見極めたのか。変化の渦中にいた当事者であり、圧倒的な結果を残した経営者しか語ることのできない「経験知」が、本書には凝縮されている。