人類が土を耕す行為によって自然から食料を得ることを覚えたのは、約1万年も前のことになるのだから、土を耕す方法の模索は、それだけで人類の歴史になり得る。トラクターが登場し、土を耕す環境が一新されたのはこの100年くらいのことにすぎない。それまでの家畜とは異なり糞尿を排出しないトラクターは、「農場内の物質循環を断つ役割」をも果たしてしまった。その結果としてもたらされたのが「化学肥料の増産と大量使用」だった。機械に依存できるようになれば労働者は少なくて済むものの、当然、農作業にいそしむ人口は目減りしていく。

今週の一冊

『トラクターの世界史
人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』

藤原辰史著
860円(中央公論新社)


19世紀末、米国で発明されたトラクター。20世紀以降、その存在が人類にどんな影響を与えたのかを深掘り。