依存症は道徳心の欠如が原因ではなく、病気である。何年も前から学界で示されてきたこの見解を、米公衆衛生局長官の報告書もようやく認めた。依存症の特徴は、生活破壊を招いてまで特定の行為を繰り返す強い衝動にある。今では多くの科学者が、依存症を引き起こすのはアルコールやたばこ、薬物だけではないという見解をもつようになった。

脳がもつ驚くべき可塑性(柔軟に変化できる性質)があだとなり、依存症に陥ると神経回路が変わり、薬物やアルコールを最優先するようになる

 米国精神医学会が作成した「精神障害の診断と統計マニュアル」の最新版DSM-5では、行動嗜癖の一つであるギャンブルが初めて障害に分類された。ジャンクフードや買い物、スマートフォンなど、現代人を取り巻くさまざまな誘惑も依存症を引き起こすと考える研究者もいる。これらもまた、激しい欲求を生む脳の回路「報酬系」に強い影響を及ぼすからだ。

 報酬系は脳の原始的な回路で、ラットの脳でもあまり変わらない。その働きにより、人間は目や耳、鼻を駆使して、生存に必要なものの在りかを突き止めようとする。報酬系は本能と反射をつかさどる脳領域にあり、食べ物や繁殖相手をめぐる競争が死活問題だった時代には大いに役立ったが、欲望を満たす機会がいくらでもある現代では、私たちを陥れる危険なわなともなる。