南極のパインアイランド棚氷(たなごおり)からは、2015年から16年にかけて面積580km2の氷山が分離して、アムンゼン海に流れ出た。この海域の水温は過去数十年に0.5度余り上昇し、氷が解けて崩落する速さは4倍になった。

 この棚氷は、アムンゼン海に注ぐ大規模な氷河の一つ、パインアイランド氷河の末端が海に張り出して浮かんでいる部分だ。この一帯の氷河を通じて、南極横断山脈の西側を覆ったドーム状の巨大な氷が少しずつ海へと運ばれている。

<b>温暖化が進むにつれ、南極沿岸部の氷が崩れてきている</b>
温暖化が進むにつれ、南極沿岸部の氷が崩れてきている

 西(にし)南極氷床と呼ばれるその氷は、面積がフランスの国土のおよそ2倍、厚さは最高で3000mを超える。氷床の下の岩盤は海面よりも低くくぼんだ盆地状になっていて、最も深い地点は海面下1500m以上にもなる。氷が海面下にも分布しているため、西南極氷床は海水温上昇の影響を受けやすい。 棚氷が崩壊し、支えを失った氷河の流れが加速して、西南極の氷がすべて海に流出すれば、世界の海水面は平均3.3m上昇し、世界各地で沿岸部が水没することになる。

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