
現在の世界記録保持者ウサイン・ボルトと20世紀前半の往年の名ランナー、ジェシー・オーエンスによる夢の対決を想像してみよう。

2009年に100m9秒58の記録を打ち立てたボルトが走る21世紀のトラックは平坦で滑りにくい合成ゴム舗装。着地のときに地面に伝わったエネルギーがすぐに脚へ戻る。オーエンスが走った第2次世界大戦前のトラックは「シンダー」という石炭の燃え殻を使った舗装で、表面は不均質で軟らかく、着地の際にエネルギーが地面に吸収されてしまう。ボルトがレースで履くのは、高速トラック用に開発された軽量シューズ。現役時代、移動はジェット機で、専属のコックが栄養豊富で低脂肪の食事を用意した。オーエンスのシューズは革製。黒人のオーエンスが育った当時の米国は人種差別が激しく、アスリートへの支援もほとんどなく、米国選手団は客船で大西洋を渡った。
かつてスポーツジャーナリストのデビッド・エプスタインは講演でこう話した。オーエンスが1936年のオリンピック直前に出した自己ベストは10秒2。もし、このとき彼がボルトと同じ高速トラックで走ったら、その記録は、ボルトが2013年の世界陸上で出した9秒77に肉薄していたとみられる。
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