梅雨どきに気になるカビ。健康への影響について、日本呼吸器学会専門医の亀井克彦氏に聞いた。
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専門医亀井克彦氏
(かめい・かつひこ)
千葉大学真菌医学研究センター教授。担当は臨床感染症プロジェクト。東京都立府中病院や米スタンフォード大学客員研究員などを経て、現職。
カビが原因となる病気は感染症、アレルギー、食中毒の3つに大きく分類できます。
カビは人から人に感染するものは少なく、接触感染するのは水虫菌くらいです。この場合は接触を避ける、バスマットなどの共有をやめることである程度、予防できます。一方で、深刻な病気を引き起こすのが、呼吸で感染するカビ。空気中には1m³に1000個ほどカビが存在し、人間は1日に1万個のカビを吸っています。本来、人間には体内に取り込んだカビを排除、撃退する機能が備わっていますが、免疫力が低下していたり、肺機能の一部が欠損したりしていると、カビによる病気を発症しやすくなります。
最近、注目される「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」は、喫煙、加齢などで肺の一部が破壊され、肺に小さな袋状の穴ができた状態で、50代以上に多く見られます。今は禁煙していても過去に喫煙経験があると、COPDである可能性は少なくありません。
カビの発生を抑えて予防
COPDでできた袋状の穴にアスペルギルスというカビが入り込むのが「肺アスペルギルス症」です。アスペルギルスは生活環境のどこにでもいるカビで、季節を問わず発症。せきやたん、息苦しさなどの症状から始まり、次第にやせて体力が落ち、呼吸がしづらくなります。重篤になると死に至り、発症後の5年生存率は5〜6割です。早期なら胸腔鏡などを使った手術で患部を切除しますが、症状が進行すると手術は難しく、投薬治療となります。
トリコスポロンというカビも注意が必要です。6~10月に増えやすく、木材や湿った場所がすみかで、台所の床下など水回り、夏場はエアコンにも発生します。このカビを吸い込んで起こるアレルギー性肺炎が「夏型過敏性肺炎」です。夏風邪のようなせきが長引き、症状が悪化すると発熱や息苦しさが。秋になると自然に症状も収まるので、診断や治療を受けない人も多いのです。

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