<田んぼと畑と名ばかりの小川に囲まれた、田舎臭いだけの町の借家に生まれた私は、家の周りで何も考えずに虫を追い回し、川で魚をすくい、カエルの合唱に耳を澄ませて過ごしていた。気づけば、あれから三十余年も経ったのだが、今やっていることがあの頃と大差ないのは、どういう運命の巡り合わせだろうか>

 『昆虫学者はやめられない』を、こう書き出しているのは、1982年生まれ、信州大学博士課程を修了し、現在は国立科学博物館で協力研究員を務める気鋭の昆虫学者。4年前、評者をして驚愕、絶句、感嘆せしめた快著『裏山の奇人─野にたゆたう博物学』(東海大学出版部)を世に問い注目された稀代のナチュラリストです。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1168文字 / 全文文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「CULTURE」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。