30代でトライアスロンにはまったのをきっかけに、フルマラソンを何度も走りました。ある時30km過ぎの正念場で、伴走者が並走する目の不自由な選手に抜かれました。速い!衝撃でした。

 視覚情報に頼りきっている私たちにとって、光のない状態で走ること自体が驚異です。ましてや高速の盲人ランナーは、晴眼者の一流選手並みのスピードで走ります。そういうトップアスリートを支える伴走者は、「いかにすごいか!」という話です。

 伴走者とは、視覚障害のある選手が全力を出しきれるように、選手の「目」となって周囲の状況を伝え、コース取り、ペース配分、タイム管理などをしながらレースをマネージする脇役です。走路のカーブや高低差、細かな凸凹や轍、わずかな段差、小石一つが決定的なダメージに直結します。転倒を避け、選手の恐怖心を丁寧に取り除くのが伴走者の使命です。「周りの状況を正確に、そして簡潔に伝えること。伴走者には言葉の技術も要求される」。