週刊誌『日経ビジネス』で書籍、演劇、美術などカルチャーに関するトピックを集めたシリーズです
シリーズ
CULTURE

738回
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『危機の外交 岡本行夫自伝』~不世出の外交官の示唆
岡本行夫が亡くなって2年たつ。新型コロナウイルスの流行初期における急逝であったため、準備をしての旅立ちではなく、あまりに早すぎる死だった。1945年11月生まれの彼は、戦争中でありながら、母和子が長男をおぶって軍務につく…
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『塞王の楯』~仕事に挑む姿勢に目を見張る
もしかして、究極の仕事術の本なのではないか。読んでいる途中、そんな思いが頭をよぎった。そして、読むほどにそれが間違いじゃないことが分かった。本作は、直木賞受賞作である。言うまでもなく、小説賞の最高峰の一つだ。小説として、…
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『日本現代服飾文化史 ジャパン ファッションクロニクル インサイトガイド』
終戦から現在に至るまでの日本の服飾文化の歴史を、豊富な図版と洞察あふれる文章で振り返る。「歌は世に連れ、世は歌に連れ」と言うが、生活に密着した文化であるファッションの歴史には、音楽と並んで同時代の世相と価値観が凝縮して詰…
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『コロナ後の未来』~パンデミックの先に待つ社会とは
新型コロナのパンデミックが始まってから2年以上が経過した。コロナ禍をくぐり抜けた先に、どんな未来が待っているのか。漠然とした不安に応えるように多数の書籍が出版されている。本書もその一つ。前作『コロナ後の世界』(2020年…
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『話すことを話す』~思ったことを伝える技術
ラジオ番組のパーソナリティーを担当して3年ほどたつが、毎回、帰り道に反省する。かんでしまった、ゲストへの言葉選びを間違えてしまった、といった具体例より、もっと、雰囲気というのか、空気のようなものに対する反省である。
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『新しい国境 新しい地政学』~変化する「国境」から見える課題
ロシアによるウクライナ侵攻以来、地政学リスクという言葉を頻繁に耳にするようになった。グローバル化の進展で企業活動には国境がないと楽観視していた状況は、一夜にして暗転した。
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『「帝国」ロシアの地政学』~旧勢力圏の瓦解が招く戦争
2019年に出版された本書の著者、小泉悠氏は目下のロシア=ウクライナ戦争の的確な分析で知られている。小泉氏はロシア「帝国」の国境を浸透膜に例える。ロシアにおける国境の概念とは、ロシア民族、あるいはスラブのベラルーシ人とウ…
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『ささるアイディア。』~成熟社会における発想法を探る
アイディアは問題解決である。しかし、そもそも何を解決すべきか、今日では課題がはっきりしていないことが多い。社会の変化が激しく、問題が複雑化していることもあるが、それ以上に生活と消費の成熟化、すなわち、「多くの問題がすでに…
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『サイコロジー・オブ・マネー』~生き抜くために必要な心構え
2年以上もコロナと戦う日々が続く中、ロシアがウクライナに侵攻した。報道を聞いて真っ先に思ったのは、人類は「疫病」も「戦争」も克服してはいないということだ。今後も災厄は起こる。それを前提に事業を手掛けるならば、リスクをとっ…
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『GAFA next stage(ガーファ ネクストステージ)』
著者は起業家でビジネススクールの教授も務める成功者だ。そのため本書もありがちなGAFA礼賛本かと思ったが、違った。その理由は彼の生まれにある。著者の父は、大恐慌時代のスコットランドで虐待を受けて育った。父の母は父のカネを…
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『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』~経済とジェンダー
「もしもリーマン・ブラザーズがリーマン・シスターズだったら、あのような形での金融危機は起こらなかったはずだ」。危機当時の仏財務大臣(現・欧州中央銀行総裁クリスティーヌ・ラガルド)はそう言ったそうだ。
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『あいつゲイだって』~アウティングの危険性を説く
昨年、国会で議論されるはずだったLGBT理解増進法案の提出が見送られた。その理由は、一部の自民党議員が、法案にある「差別は許されない」という言葉などに対して反発したからだという。
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『獲る・守る・稼ぐ』~四の五の言わずに成果を出すのがリーダー
「スクープを獲る」から「スクープで稼ぐ」への戦略転換を主導した週刊文春の前編集長のリーダー論。出版不況といわれて数十年。雑誌のような伝統的な紙媒体はデジタル化の直撃を受けた。販売収入と広告収入、ともに下落を続けるのは必定…
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『グリーン・ジャイアント』~「脱炭素後進国」日本への指摘
カーボンニュートラルという言葉を聞いて、反資本主義的であるとか、またしても欧米主導でできた流れにうかうかと乗せられるべきではないと思う方にぜひお薦めしたい本だ。
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『Invent & Wander』~浮かび上がる希代の経営者の実像
まずはイントロダクションだけでも読んでほしい。ここには、ジェフ・ベゾスがこれまで発した言葉のハイライトが集められている。この本はベゾスが実際に書籍にまとめるために書いたものではない。けれども、株主に対する必死の言葉や、イ…
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『田辺聖子 十八歳の日の記録』~戦争と青春の日々
「何事ぞ! 悲憤慷慨その極みを知らず、痛恨の涙、滂沱として流れ、肺腑は抉らるるばかりである。我等一億同胞胸に明記すべき八月十五日。嗚呼、ついに帝国は無条件降伏を宣言したのである。
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『稲盛と永守』~2人のカリスマ経営者の共通点
京セラの稲盛和夫氏と日本電産の永守重信氏を比較した経営者論。日本を代表する経営者を改めて並べると、数多くの共通点がある。第1に、経営資源の中でもっとも従業員を重視している。人が何より可変的な経営資源であり、したがって投資…
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『庭仕事の真髄』~自然とつながり心を耕す
京都に越してから、とてもすてきなご夫婦と親しくなった。お二人は有機菜園を耕しながら、エネルギーを最大限自給する循環型の暮らしを営んでいる。大な敷地に約200種1000本の樹木を苗から植えるなど、長い年月をかけて、自分たち…
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『推しエコノミー』~オタク経済圏VSハリウッド経済圏
端的に言えば、この本は紛れもなく、自己啓発本である。いや、“日本啓発本”とでもいうべきか。たしかに、『鬼滅の刃』や『ポケモン』、ゲームなどのメガヒットをわかりやすく、図表を使い、一目瞭然化しているところに、この本の大きな…
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『嫌われた監督』~異端の将がチームを変えた
本書は、中日の選手や球団関係者が、いかに落合博満監督によって変化させられたかを描く。第1章の川崎憲次郎から泣かされる。この章には、その後に続く章に通底する落合の愛情と非情が流れている。
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テスラが仕掛ける電池戦争
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