「IoX」で経験を伝承
水道インフラ維持が使命

 今から10年後、日本の水道インフラがどうなっていると想像しますか。少子高齢化で財政難が深刻化し、ベテラン技術者はどんどん退職していきます。官だけに頼ったシステムが行き詰まるのは明らかでしょう。

 そんな問題意識から立ち上げたのが、「WBC(ウォータービジネスクラウド)」です。10年後の働き方が、今と同じわけがない。官と民、そして民間同士が連携を深めるには、クラウドを使ってリアルタイムで情報を共有し、分析するプラットフォームが不可欠です。上下水道で使う「機械」と「電気設備」に強みを持っていた当社が、時代に合わせて変わるために、WBCは不可欠なツールになっています。

<b>[ なかむら・やすし ]1981年富士電機製造(現・富士電機)入社。水処理システム開発などを手掛ける。2008年に富士電機と日本ガイシの水環境事業が統合しメタウォーター発足。2016年6月から現職、59歳。</b>(写真=村田 和聡)
[ なかむら・やすし ]1981年富士電機製造(現・富士電機)入社。水処理システム開発などを手掛ける。2008年に富士電機と日本ガイシの水環境事業が統合しメタウォーター発足。2016年6月から現職、59歳。(写真=村田 和聡)

 社長として掲げるのが「IoX」というキーワード。当社の造語で、Xはエクスペリエンス、経験を意味します。IoTはモノのインターネットと訳されますが、それと対をなす概念です。

 水道設備にセンサーを装着して稼働データを収集しても、それだけでは意味がありません。作業員が「いつ」「どんな順番」で点検するかといった、人間の活動に伴うデータと組み合わせることで、新たな価値が生まれます。

 ベテラン技術者のノウハウを伝承する際にも役立つでしょう。ヘッド・マウント・ディスプレーやウエアラブルのカメラなどを使って、仕事のやり方を記録することにも取り組んでいます。

 現場では最初、IT(情報技術)化に対する抵抗がありました。しかし今では、ごく普通に使われています。実績を積み重ね、IoXの考え方を浸透させていきたいと思います。こうして培ったシステムは、必ず世界で売れるはずです。

 水道インフラをめぐる状況は確かに厳しい。しかし未来が真っ暗だとは考えたくありません。自治体の仕事を民営化すれば効率化の余地が生まれますし、当社の仕事も増えます。きちんとした使命感を持つ企業でないと“命の水”は扱えません。仕事の意義を常に社員に問いかけ、「もうけ」と「社会貢献」を両立させていきます。