買収先企業は「先生」
目線を合わせて総仕上げ

 ずらっと並んだシングルモルトウイスキーのストレート。英スコットランドのパブで医療関係のディーラーにお気に入りのウイスキーを尋ねたところ、「甲乙つけがたい」として16杯も出てきました。「全部飲んだらあの病院の医療機器をおたくに替えるよ」。そう言われ、意地になって全て飲み干し、ホテルで4日間倒れてしまいました。本当に契約を切り替えてくれましたが、若気の至りでしょうね。

<b>[ すけの・けんじ ] 1977年京都大学法学部卒、富士写真フイルム(現富士フイルム)入社。主に経理・経営戦略畑を歩み、最近では大半のM&A(合併・買収)案件に関わってきた。2016年6月から現職。62歳。</b>(写真=的野 弘路)
[ すけの・けんじ ] 1977年京都大学法学部卒、富士写真フイルム(現富士フイルム)入社。主に経理・経営戦略畑を歩み、最近では大半のM&A(合併・買収)案件に関わってきた。2016年6月から現職。62歳。(写真=的野 弘路)

 これは30代で英国の現地法人に赴任した時の話です。担当は経理でしたが、支店長に「営業をやりたい」と直訴し、医療機器と映画用フィルムを担当しました。直販体制への切り替えを進め、営業の業務範囲が広がった時期。やりがいがありました。

 本社経理に戻った後は貿易摩擦の対応。2002年からの米国赴任では、M&A(合併・買収)で傘下に入った企業との相乗効果を上げる作業にも取り組みました。そこで、相手の目線に合わせて考えるという英国で学んだことが役立ちました。

 相手が理解してくれないとコミュニケーションは成立しません。買収先の企業は「先生」です。我々が持っていないものを持っているわけですから。ガバナンスを利かせることは必要でしょうが、無理やり押さえつけてもうまく機能しません。

 今年4月、古森重隆・会長兼CEO(最高経営責任者)から社長の打診を受けました。中嶋成博前社長が体調面から続投が難しくなったのが理由です。経営企画部長として2人の傍らに仕え、「一番考えが分かっている人間」ということで選ばれたのでしょう。

 富士フイルムは今、改革の総仕上げの時期に入っています。そこで、就任時に3つの抱負を掲げました。医薬・再生医療など新規事業の収益性を高めることと、経営の効率化、そしてグローバル化です。特に、経理の経験が長い私に期待されているのは効率化。自社株買いを進める一方、積極的な投資の目利きでも力を発揮していくつもりです。社長になっても相手に「目線を合わせる」姿勢は守り続けます。