<b>石灰漬けにし、毛と脂を取り除く</b>(写真=佐藤 久)
石灰漬けにし、毛と脂を取り除く(写真=佐藤 久)
<b>ピット槽でタンニン液に漬ける</b>(写真=佐藤 久)
ピット槽でタンニン液に漬ける(写真=佐藤 久)
<b>なめした革を伸ばす</b>(写真=佐藤 久)
なめした革を伸ばす(写真=佐藤 久)

 同社のモノ作りにはファンも多い。低価格の国産時計で人気を集めるKnotの遠藤弘満代表もその一人。「いつか自分のブランドを立ち上げたら栃木レザーを使う、と何年も前から決めていた」。Knotの時計に合わせる革バンドのうち栃木レザーを使ったものは、売り切れ品番が続出しているという。

 栃木レザーの2016年6月期決算は売上高が約15億円、営業利益が1億円強となり、ともに過去最高を更新した。販売数量はほぼ横ばいで推移しているものの、売上高は右肩上がりで伸びている。高付加価値路線が評価され、革の取引価格が上昇しているからだ。

業績は右肩上がりで伸びている
●売上高と営業損益の推移
<b>業績は右肩上がりで伸びている<br />●売上高と営業損益の推移</b>
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 ここに至るまでの道のりは長かった。創業は1937年。軍用品の工場としてスタートし、戦後から本格的に皮革生産に乗り出した。その頃からピット槽を使ってヌメ革を作っていたが、当時のヌメ革に対する世間一般の評価は「硬すぎて使いにくい」。そのため、主に学生かばんや革靴に使われる素材として扱われていた。

 栃木レザーの抱える課題も同じだった。取引先企業に「柔らかいヌメ革を作れないか」と持ちかけられたのが転機となった。なめした後で革に油を染み込ませ、さらに細かい振動を与えて繊維をほぐすなど、試行錯誤の末に製品化に成功。2000年頃には、現在につながる第一歩を踏み出した。

400種類の革を作り分け

 ここでさらなる試練が訪れる。同族企業だった栃木レザー(当時は栃木皮革)はグループで結婚式場や建設業などに事業を広げていたため、バブル崩壊後に慢性的な赤字体質に苦しんでいた。そこで、産業再生機構の支援を受け、2004年に皮革生産部門のみが集約されて現在の形で再スタートすることとなったのだ。

 残ったのは、大量のピット槽と、熟練の職人たち。国内メーカーの多くは、鉱物系の薬品を使うことでコストを抑えながら大量生産できる「クロムなめし」に既に移行していた。低価格路線では、栃木レザーが太刀打ちできるわけもなかった。

 再生機構の指名を受けて内部昇格した山本社長が打ち出した方針が、徹底して品質を高め、安売りはしないこと。たとえ生産に手間と時間がかかったとしても、柔らかいヌメ革を供給する高付加価値路線を推し進めてきた。

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