需要が伸び続ける炭素繊維のリサイクル技術でリードする。車載用バッテリーの金属のリサイクルにも力を入れており、EV(電気自動車)時代をにらんだ戦略を進める。

フレームをまるごと窯へ
フレームをまるごと窯へ
車のフレームや航空機部品などをそのまま窯で加熱。廃棄物に含まれる炭素繊維を高品質の状態で取り出せる(写真=上野 英和)

 「彼らのリサイクル技術は業界でもトップクラスだろう」。三菱ケミカル関係者が一目置くベンチャー企業が、岐阜県可児郡の深い山の中にある。カーボンファイバーリサイクル工業は、その名の通り炭素繊維をリサイクルする会社だ。今年6月には、欧州エアバス系のベンチャーキャピタルなどから11億円を調達、その技術に注目が集まっている。

 炭素繊維は鉄の10倍の強度を持ちながらも重量を4分の1に抑えられるため、樹脂と混ぜ合わせて自動車のフレームをはじめ、航空機の機体やエンジン部品に使用されている。今後も需要は伸びるとされ、調査会社の富士経済の予測では、世界の炭素繊維製品の市場規模は2030年に15年比で約4.8倍まで拡大すると見込まれる。

 しかし課題はコストにあった。鉄が1kgあたり数十から数百円の世界で勝負しているのに対し、炭素繊維は同3000円前後。カーボンファイバーリサイクル工業はここに着目した。社長の板津秀人氏は「使用済み炭素繊維のほとんどは埋め立て廃棄されている。これを再利用できれば、低価格の炭素繊維を提供できると考えた」と話す。

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