2007年にアイ・ティ・イーを立ち上げ、保冷剤の開発を進めてきたパンカジ・ガルグ社長は「保冷剤の水溶液の成分や配合を変えるなど試行錯誤を重ねた。対応温度帯を増やし、保冷時間が長くなるよう工夫した」と説明する。

<b>保冷剤だけでなく保冷ボックスも独自開発するアイ・ティ・イーのパンカジ・ガルグ社長</b><br />(写真=北山 宏一)
保冷剤だけでなく保冷ボックスも独自開発するアイ・ティ・イーのパンカジ・ガルグ社長
(写真=北山 宏一)

 もう一つ、ガルグ社長が取り組んだのは一定の温度で安定させること。そのため保冷ボックスやカート、コンテナ容器も独自に開発している。アイスバッテリーを使用する際の、最適な配置場所や容積、形状を実験から割り出した。持続時間を伸ばしたいときは保冷剤を追加するだけ。1枚から2枚にすれば、持続時間は2倍に伸びる。

 販売方法にも特長がある。保冷剤はすべてレンタル、専用の保冷容器も基本はレンタルかリースで、冷凍庫など売り切りの製品は一部だ。

 保冷剤のレンタル価格は1個当たり月額300~400円。容器は保冷ボックスは同700~1500円、航空コンテナは同10万~15万円といった具合に設定している。月額レンタルなので利用者にとっては導入しやすい。

 一方、アイ・ティ・イーにとっては収益の安定を図れ、顧客と長期にわたって関係を保てる。「専用容器を併用してもらうことで、保冷剤だけでなく保冷システム全体の提供ができるのが最大の強み。レンタルを通じて温度設定や輸送量など顧客の細かい要求に対応する提案型のビジネスだ」(ガルグ社長)。

 今年7月からは、日本貨物鉄道(JR貨物)がアイスバッテリーを利用した貨物コンテナ1台を導入して、生鮮品の輸送で試験運用を始めた。北海道の野菜を東京都内に列車とトラックで48時間で運ぶ。

 従前、電気を使わない冷凍・冷蔵輸送ではドライアイスが使われてきた。だが、およそマイナス79度で解けて気化するドライアイスでは、内部の温度を一定に保つのが一般的に難しい。

 研究用試薬を販売する八洲薬品(大阪府茨木市)では、2015年2月から製品の配送でドライアイスからアイスバッテリーを利用した方式に切り替えた。同社の廣岡祥弘社長は「温度に敏感な試薬の輸送の際、温度調節が難しいドライアイスでは、凍り過ぎてしまったり、大きな温度変化が起きたため試薬が使えなくなったりすることがあった。一定の温度に保てるアイスバッテリーなら、そうしたことは起きない」と語る。

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