少子化の時代に業績を伸ばす老舗企業がある。教材から園舎まで、ターゲットは就学前の子供たちだ。ユニークな遊具で子供の感性を伸ばし、一人ひとりの教育の質を高める。

デザインも楽しさも
●デザイナーの深澤直人氏と協働して製作した遊具。デザインのみならず、安全性や子供の成長への寄与を考えて開発した
デザインも楽しさも<br /><b>●デザイナーの深澤直人氏と協働して製作した遊具。デザインのみならず、安全性や子供の成長への寄与を考えて開発した</b>
(写真=菅野 勝男)

 青一色の大きな立方体。中には大きなトンネルのような穴や、斜面、階段が組み込まれている。穴をくぐったり、穴に寝そべったりすることもできれば、斜面を滑ったり、走り抜けたりすることもできる。子供向け遊具・教材開発会社ジャクエツ(福井県敦賀市)が無印良品の商品デザインを監修することでも知られる深澤直人氏と開発した「CUBE(キューブ)」だ。深澤氏とは、ほかにも真っ赤な山形の遊具「OMOCHI(オモチ)」、傾斜を配した黄緑のドーナツ形遊具「BANRI(バンリ)」などを共同開発。ジャクエツが注力する特徴的な遊具は注目を集め、わずか6年の間に、全国に約1000基ほど設置されるまでに拡大した。幼稚園や保育園といった子供が集まる場所のみならず、クルマのショールームなど商業施設も次々と導入している。少子化の時代に意外な話だが「保育施設や子連れで出掛ける場所は増加しており、設置場所は今後も増える」とジャクエツの徳本達郎社長は話す。

 若狭と越前の最初の文字をとってジャクエツと名付けられた同社は、1916年創業。創業者の徳本達雄氏が開園した幼稚園で必要となった教材を作製することに端を発する。60年代から遊具の製造を始め、以降もファッションデザイナーを起用した園児服を作るなど、時代に合わせた子供向け商品開発をしてきた。90年代からは園舎以外の公園などへの遊具販売や自社運営以外の幼稚園の建築・運営へと業務を拡大した。施設内のトイレや机などもデザインから独自開発して作ることもある。全国約4万カ所の幼稚園・保育園のうち約7割が同社の顧客。「クレヨン1本から建物設計まで」できるのがジャクエツの強みだ。

 2006年に父親から社長を引き継いだ徳本氏が注力したのが、子供の感性や創造性に焦点を当てた商品。きっかけになったのが、06年に関わった東京都立川市のふじようちえんの改装だ。「子供だからこそ、デザインを考えぬき、質の高い環境を創りたい」。園長から相談を受けて、徳本氏が思い浮かべたのは、佐藤可士和氏だった。

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