そんな図書館革命を目指すカーリルの本社があるのは吉本代表の生まれ故郷、岐阜県中津川市。緑豊かな田舎町にある普通の一軒家が本社だ。

 吉本代表は大学卒業後、ITエンジニアとして東京で働く一方、時折は中津川に戻り、自治体向けITシステムの改良案件を請け負ってきた。

吉本龍司代表は小学3年でパソコンを手にして以来、プログラミングのとりこに
(写真=早川 俊昭)

 まず担当したのは安全情報サービスだった。火災や熊の出没など緊急事態が発生すれば、住民の携帯電話に電子メールが送られるというもの。特段目新しいものではなかったが、約8万人の人口を抱える中津川市で半数が加入する成功案件となった。

 「IT業界では当たり前でも、公共機関でやれば高く評価される」(吉本代表)。今の事業を進めるヒントを得た。

 その後、ウェブシステムに関する打ち合わせで図書館を訪れたことが、転機となった。現場で使われていたITシステムは検索速度が遅い。1000万円以上の予算を投入しても年間の利用者が100人程度にとどまっていた。「ネットワーク機器などは充実しているが、上手に利用されていない。実にもったいないが、逆に考えると伸びしろが十分にある」(吉本代表)。

 そこで仲間と協力して、2010年に岐阜県、東京都、京都府のみを対象とした横断検索システムを試作した。その後、徐々に対象を広げ全国の図書館の蔵書を一括検索できるサービスを一般ユーザー向けに開始。2012年には正式に会社を設立した。

 検索可能な図書館は当初4300館だったが、大学や研究機関にも対象を拡大し、現在は6700館超と日本全国の94%の図書館をカバーするまでに至った。

 利用者を増やすため大胆な手も打った。システムの仕様を無償で公開し、誰でも開発に参加できるようにした。すると、スマートフォン用のアプリが次々と登場。検索件数は2016年に年8億件を見込むまで拡大した。会社設立からわずか4年で4倍に伸びた。

図書検索サービスの利用は急拡大
●カーリルのシステムを通じた書籍情報の検索件数

 「サービスの認知が広がり、図書館の司書さんも、自治体のシステムではなくカーリルを使っていると聞いた」(吉本代表)。そこで業務向けにも参入しようと、著者名など詳細な検索項目を追加したシステムを開発し、冒頭にあるように京都府への提供につながった。