コバンザメやカタボシイワシなど、市場に出回らない珍しい鮮魚を漁港から仕入れ、飲食店に直送する。全国の漁業関係者を回って信頼関係を築き、従来の鮮魚流通とは違うチャネルを作り出した。

<b>地方の無名の魚を発掘し、居酒屋など飲食店に直送する。上は珍しい魚の名前と適した食べ方</b>(写真=菅野 勝男)
地方の無名の魚を発掘し、居酒屋など飲食店に直送する。上は珍しい魚の名前と適した食べ方(写真=菅野 勝男)

 メヌケにハチビキにメガネウオ、さらにはコバンザメまで──。

 大阪・北浜の居酒屋「典」には、知られざる高級魚が並ぶ。「珍しくてうまい魚が入ったから、試しで食べてみいひんか」と大将が勧めると、注文がひっきりなしに入る。こうした珍しい魚を卸しているのが、食一(京都市)だ。

 食一は漁師や漁業協同組合と居酒屋や回転すしなどの飲食店を仲立ちし、鮮魚を産地から直送している。通常の鮮魚の卸売りと異なり、市場に出回らない珍しい鮮魚を積極的に仕入れ、店舗にダイレクトに卸している。

 最近ではIT(情報技術)を活用した鮮魚流通ベンチャーが多く生まれているが、その多くは仕入れを安定させるために卸売市場も併用している。そんな中、食一の田中淳士・代表取締役(冒頭写真の右)は、「鮮魚は市場からの直送のみに限っている」と独自路線を行く。

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