自分で考えて動くロボット

 この物流センターで活躍するロボットの頭脳を開発するのが、産業用ロボットを「知能化」する制御機器(コントローラー)を手掛けるMUJIN(東京・文京)だ。「自分で見て、自分で考え、自分で動く。人間には当たり前のことを、ロボットでも実現したい」。滝野一征CEO(最高経営責任者)は強調する。

<b>目指すのはロボットの頭脳。客先には「MUJIN インサイド」と書かれたステッカーを配っている</b>
目指すのはロボットの頭脳。客先には「MUJIN インサイド」と書かれたステッカーを配っている

 既に製造業の現場で活躍する産業用ロボット。あらかじめ教え込まれた動作を正確に繰り返すことにおいては、質・量ともに人間の手作業を圧倒する。

 逆に言えば、教え込まれた作業以外は苦手だ。それに「動作を教え込む」のはかなり骨の折れる作業。従来は専門のオペレーターが自身の経験や勘を頼りに、ロボットの動作を関節単位で調整し、プログラムしていた。

 例えば、箱に無造作に入れられた何百ものネジから、1つを拾い上げる作業。人間なら幼児でもこなせる簡単な作業だが、ロボットには難しい。

 ひっくり返っていたり、ほかのネジとの間に埋まっていたりと状態は千差万別。全ての場合を想定したうえで適切な動作をさせるには、膨大な量の動作パターンをプログラムしておく必要がある。この作業を「事前に教え込むためには何カ月もかかる」(滝野CEO)。

 MUJINのコントローラーは動作を事前に教え込むのではなく、最適な動きをその場でその都度、自動設定する。

 この手法の最大の課題は、対象物の形状や位置を正確に認識してロボットを動作させるために複雑で膨大な量の計算が必要なこと。ここで生きるのが、MUJINのCTO(最高技術責任者)で共同創業者のデアンコウ・ロセン氏が2006年、米カーネギーメロン大学のロボット研究所に在籍していた頃に編み出した計算アルゴリズムだ。

 計算量を大幅に減らせ、最適な動作プログラムを瞬時に生成できる。同大学のロボット工学の権威、金出武雄氏に師事したロセン氏の研究成果は当時、世界中で驚かれた。大手も事前の教え込みをなくすのがロボット知能化のカギとは気付いていたはずだが、計算の遅さがネックであり続けてきたからだ。

 もちろん、アルゴリズムだけでロボットを知能化できるわけではない。「障害物を避ける」「ロボットの関節を曲げすぎない」など、現場で求められる条件はまだまだある。

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