高齢化で公的年金は限界

公的年金のみだと現役時代の収入の半分に
●厚生年金と基礎年金の合計による所得代替率の推移
公的年金のみだと現役時代の収入の半分に<br /><span>●厚生年金と基礎年金の合計による所得代替率の推移</span>
出所:厚生労働省
日本の年金制度の総合力は中国より低い
●グローバル年金指数ランキング(2016年度)
日本の年金制度の総合力は中国より低い<br /><span>●グローバル年金指数ランキング(2016年度)</span>
出所:米コンサルティング会社マーサ―
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 言うまでもなく、日本の公的年金は制度疲労を見せている。賦課方式と呼ぶ、シニア層の年金受給分を現役世代が仕送り方式で支える仕組みを採用しているため、少子高齢化の影響を直に受ける。

 国立社会保障・人口問題研究所によると、現在は1人の高齢者を2.8人の現役世代で支えているが、2030年には1.8人、2050年には1.3人で支えることとなる。支えられる側が増え、支える側が減れば制度運営が難しくなるのは当然のことだ。

 現役世代の所得に対して、もらえる年金額がどれくらいかを示す所得代替率という数値がある。2014年度時点では62.7%だが、厚生労働省の試算では2040年度に50%程度まで引き下がるという。

 米コンサルティング会社マーサーが各国の年金制度の持続性などを比較したランキングでは、日本は全27カ国中の26位と下から2番目に沈む。驚くべきことに、中国やインドなどよりも低い順位となっている。

 日本の年金財政は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を通じて運用する130兆円の積立金はあるものの、将来、年金の支給額が減り、支給開始も70歳などに引き上げられるシナリオは避けられない状況にまで追い込まれている。

<b>支給額の上昇を抑えやすくする国民年金法改正案を巡り国会が紛糾</b>(写真=時事)
支給額の上昇を抑えやすくする国民年金法改正案を巡り国会が紛糾(写真=時事)

 12月に入って成立した公的年金の支給額を抑制しやすくする国民年金法改正案を巡っては、国会で激しい論争が繰り広げられた。野党民進党は「年金カット法案」と批判する一方で、安倍晋三首相が「世代間の公平性が確保され、制度への信頼を得る」と訴える場面もあった。

 こういった環境の中では、政府としても「公的年金が制度疲労を見せているので、国民自らも積み立ててほしい」とDC制度拡充の本当の狙いを声高には説明できない。

 将来設計の責任が「公」から「私」にバトンタッチされつつある事実を、制度変更を通して読み解く他はない。

 かつて、高齢者の生活や介護は共同体が支えてきた。それが、経済発展を通じて政府が支える体制ができ、社会が成熟して高齢化を迎えた今、自らが自らの老後を支える準備をしなくてはいけない時代となっている。

 経済コラムニストの大江英樹氏は「DCは税制メリットが大きく、資産運用には優れた制度。公的年金の補完としては最適」と指摘する。

 公的年金だけでは国民の将来を支えられないが、「じぶん年金」普及に向けて制度は整備した。政府の苦しい胸の内が透けて見える。

 2017年1月からのDC制度変更でスポットライトを浴びているのが、新たな加入対象となる公務員だ。雇用と収入が安定しており、金融機関にとっては、喉から手が出るほど欲しい顧客層。新たに口座を開設してもらえば、少額投資非課税制度(NISA)口座の開設や他の金融商品を売り込むチャンスにもつながる。

 地方公務員との結びつきが強い、地方銀行ではDC口座開設に積極営業を仕掛けているはず──。とあるファイナンシャルプランナー団体からそんな話を聞いて、四国のある有力地銀を訪ねた。すると、想定とは真逆の答えが返ってきた。

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