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 専門的なスキルを持つ人材を確保するために、外部企業と連携する動きは広がっている。「100年に1度の大変革期」(トヨタ自動車の豊田章男社長)の到来で、自動運転や電動化といった新技術の開発が急務の自動車業界。自動車各社は新技術に不可欠な人材の獲得に奔走し、これが世界の獲得競争にも拍車をかけている。

 トヨタ自動車はここ数年、自動運転開発に特化した自前の研究所「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント」(TRI-AD、東京・中央)を立ち上げたり、ディープラーニングのスタートアップ、プリファード・ネットワークス(東京・千代田)に100億円超の巨額出資をしたりと、技術と人材の確保を加速させてきた。そんな中、今年5月に発表したのが、東証マザーズ上場企業でデータ分析を得意とするアルベルトとの協業だ。

トヨタは社外から人材を得ながら社内人材も教育
●トヨタ自動車とアルベルトの協業体制
アルベルトは社内で週3日、勉強会を開いて互いのノウハウを学ぶ。テーマは社員自ら提案

 目的は自動運転技術の早期開発にある。開発の工程は大きく3つに分かれる。まず車両に搭載したカメラなどから得られる大量のデータから、損傷しているなど使えないデータを排除し、必要なものだけを整理して用意。次に、そろえたデータを自動運転用のアルゴリズムに投入し、車両にどんな動きをさせればいいかを学習させる。最後に、出来上がったアルゴリズムを車両システムに搭載し、車両を動かす。

外部と内部を使い分け

 とはいえ競争力に関わる開発まで社外に任せるわけにはいかない。具体的には、2番目のアルゴリズムの開発と3番目の車両の制御は、日ごろから協力関係を築く部品メーカーや出資額の多いスタートアップ企業などと協業体制を敷いた。一方、そうでないデータ分析の工程では、むしろ自動車だけでなくあらゆる業界でデータ分析の実績のある企業と組む。その方が、業界の常識にとらわれない斬新な発想が出やすいからだ。

 提携先としてアルベルトを選んだ理由について、提携発表の際にトヨタ自動車自動運転・先進安全統括部の平野洋之氏(現TRI-ADディレクター)は「AI活用にはデータ分析のノウハウが不可欠だが、残念ながら社内にはリソースが不足していた。アルベルトは国内トップクラスの技術者を擁していると認識している」と説明する。アルベルトは従業員約180人のうち100人以上のデータサイエンティストを抱え、顧客も自動車メーカーに限らずその他の製造業やサービス業など様々だ。

 トヨタはアルベルトから、具体的な人数は明らかにしないものの数多くのデータサイエンティストを派遣してもらう一方、社内向けにデータ分析研修も提供してもらっている。今後、AIの導入は自動運転だけでなく多方面で必要になることは間違いない。そこで必要になるデータ分析の人材を増やしておくことは、大変革期を乗り越えるために欠かせない。

 もっとも、トヨタのように、データサイエンスを活用する目的が明確になっている場合は必要な人材やスキルを見極めやすいが、必ずしもそうとは限らない。そもそもデータサイエンスを活用するための人材や組織がないケースも多いだろう。