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社内に眠る「データ」を分析して、業務に役立てる「データサイエンス」が脚光を浴びる。もっとも、やみくもにデータを扱っても価値は生めない。要諦はどこにあるのか。最新事例を基にデータサイエンスの活用方法を今号と次号で紹介しよう。

 ワンピース5点は(東京・池袋の)サンシャインシティの店舗へ送ってください」「スカートが物流倉庫から3点届きます」──。

 女性に人気のアパレルショップ「アースミュージック&エコロジー」の店舗のパソコンには本部から毎朝、こんな通知が送られてくる。店舗内の在庫を他の店舗に送ることを指示したり、新たな商品が物流倉庫から届くことを知らせたりする内容だ。

アースミュージック&エコロジーの290店舗でデータサイエンスが活用されている

 在庫が不足しそうな店舗にあらかじめ商品を物流倉庫から送っておけば、販売機会を失うことはない。ある店舗で思うように売れない商品も、別の店舗では売れ筋である場合もあるから、店舗間で商品をやり取りすることが欠かせない。EC(電子商取引)サイトに出品する商品の確保にも目配せする。

 アースミュージック&エコロジーを運営するストライプインターナショナルは、そんなきめ細かい在庫管理で欠品と売れ残りへの対応を進める。

 商品を物流倉庫や店舗、あるいはECサイトの間でどう回すか。全国で290店舗を構えるアースミュージック&エコロジーならなおさら難易度は増す。移動するアイテム数は1日で1万点を超える日もあるという。

利益率が15ポイント上昇

 こんな膨大で複雑な処理をこなせるようにするのが、データサイエンスだ。ストライプインターナショナルが開発したプログラムは、各店舗ごとの販売実績や在庫量のデータを収集し、過去の販売データなどを加味しながら、店舗ごとに翌日の販売量を予測する。その上で、各店舗やECサイトで最適な在庫量をはじき出し、各店舗やECサイトに商品の移動を指示する仕組みだ。今年1月から試験運用を始め、4月から全店舗に導入した。

欠品と過剰在庫を減らす
●ストライプインターナショナルの店舗における在庫管理の一例

 効果は大きい。あるトレンチコートのケースでは、売れる店舗に在庫を集めたことで、売れ残りの割引セールを実施する必要がなくなったという。これで利益率は15ポイント上昇した。

 開発を主導しているストライプインターナショナルの山崎茂樹デジタルトランスフォーメーション本部長は、「これまでも在庫を最適化するために、物流倉庫と店舗や店舗間で商品をやり取りすることはしていた。だが、計画を作るのは1日仕事。商品の量や店舗が多く、すべての在庫を細かく差配するのが難しかった」と振り返る。

 それが、データサイエンスを活用してからは、プログラムがはじき出した原案をマーチャンダイザーと呼ぶ責任者が最終判断すれば済むようになった。人手をかけることなく、在庫をコントロールする術を得たストライプインターナショナルは今後、アースミュージック&エコロジー以外のブランド店舗でも、開発したプログラムを展開する計画だ。

 あらゆる仕事がデジタル情報と関わりを持つ時代。日々、生まれている膨大な量のデータを上手に活用すれば、コスト削減の道具にも、売り上げアップの材料にもなる。ストライプインターナショナルの例がそれを物語る。