英国のEU離脱決定から5カ月。当初の予想とは裏腹に、英国内は好景気が続く。しかし、裁判所が離脱通告に「待った」をかけ、交渉計画に暗雲が垂れ込めてきた。ポンド安とトランプ氏の米大統領当選も波乱要因。不透明感は強まる一方だ。

 ロンドン有数のショッピング街、ボンドストリート。クリスマスシーズンを控えたこの時期、一帯は買い物袋を抱えた人々で溢れ返る。例年見られるなじみの風景だが、今年はその様相が少し違っている。

 「ルイ・ヴィトン」「バーバリー」「エルメス」。通りに軒を連ねる高級ブランド店の中で目立つのは、アジアや中東地域から訪れた観光客だ。目当ての品物を見つけると、次々と店員に注文を出していく。「観光客の伸びは例年にないペース。特に7月以降、爆発的に増えた」。ある高級ブランド店のスタッフが言う。その勢いは今も続いている。

 英国が6月23日に国民投票で、欧州連合(EU)からの離脱を決めてから約5カ月がたった。決定直後、世界の株式市場で株価が大きく下落し「リーマンショックの再来」への不安が広がった。多くの専門家が英国経済の失速を予想。国際通貨基金(IMF)も7月、2016年の実質GDP(国内総生産)成長率見通しを1.9%から1.7%に引き下げた。

 ところが、大方の予想に反して、英国経済は堅調を維持してきた。理由は、通貨ポンドの下落だ。EU離脱決定前の水準に比べて、対ドルで約16%下がった(11月25日時点)。ポンド安に引かれ、アジアや中東などから大量の観光客が押し寄せているわけだ。夏以降、冒頭のボンドストリートやリージェントストリートなどの高級ブランド店は割安感の出た商品を購入する観光客で溢れ返っている。

 落ち込みが予想された7月の小売り売上高は、前年同月比で5.9%増加。このうち非EU圏からの観光客向けの売り上げは同44%増に達した。2014~15年頃、円安に引かれたアジアの観光客が日本に大量に押し寄せた「爆買い現象」の構図とそっくりの状況が起きている。


ポンド安が続く
●通貨ポンドの推移
ロンドン中心部のショッピング通り。ブランド店を中心に例年にない数の観光客でにぎわう(写真=Bloomberg/Getty Images)
2016年予測は英国が首位に
●先進7カ国の経済成長率 (2016年は10月時点の予測)
出所:国際通貨基金(IMF)