ヤマトHD子会社で料金過大請求が明らかになるなど、引っ越し業界の不透明さに疑問が浮上している。背景にあるのは、「業者と消費者との間にある情報格差」と長年染みついた「どんぶり勘定」体質だ。人手不足でコスト上昇圧力がかかる中、顧客に対する透明性確保にも対処する必要がある。

引っ越し業者の中でも仕事が丁寧で作業員も親切。無茶をするイメージはなかったのだが……」
企業から社宅管理を引き受け、転勤に伴う引っ越しの手続きや業者の選定などを代行している日本社宅サービス。全国の企業から委託を受け、顧客と業者との間に入って従業員の住居の準備を支援してきた。引っ越し業者各社の体質をよく知る同社の石上敦司取締役が首をかしげるのは、今年発覚した取引先の引っ越し業者が起こした不祥事についてだ。
不祥事とは宅配最大手ヤマトホールディングス(HD)子会社、ヤマトホームコンビニエンス(YHC、東京・中央)による法人向け引っ越し料金の水増し請求問題だ。

ヤマトHDは7月24日、YHCが過去2年2カ月間に引っ越し業務を契約した法人顧客のうち、8割に当たる企業に対し総額約17億円を過大請求していたと公表した。その後同社は過去5年に遡って追加調査し、過大請求の金額が31億円まで膨れ上がると推計。本来であれば、事前の見積もりよりも実際に運んだ荷物が少なければ、その分、料金を返還することになっていたが、YHCは返していなかった。
社外弁護士などで構成する第三者委員会が国土交通省に提出した調査報告書によると、過大請求の中には採算確保のために悪意で見積金額を上乗せしたケースまであった。
報告を受けヤマトHDは、すべての引っ越しサービスについて「商品の再設計や約款順守の徹底が完了するまで」新規受け付けを停止した。
冒頭の日本社宅サービスが選定対象にする引っ越し業者には日本通運、サカイ引越センター、アートコーポレーションといった大手が並ぶ。その一角を担っていたYHCの不祥事。日本社宅サービスは、顧客企業の信頼を失ったYHCが今後引っ越しサービスを再開する際、社内チェック体制を含めた不正対策の構築を確認したうえで選定対象のリストに残すかどうか検討するという。
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