僕がVIVITAを作ったわけ

 “優秀な人材”を育てるはずの「学校」という枠組みから逸脱した人生を歩んできた吉藤氏と林氏。その成功譚はあまりに個性的で、“偶然のたまもの”と思う読者もいるかもしれない。

 だが、大手企業からスタートアップまで、各社が新たな商品やサービスを生み出す“ゼロイチ人材”の獲得・育成に躍起になっていることを考えれば、両氏のケースを特殊事例として片づけるべきではない。日本経済に漂う停滞感を打破しようとイノベーションの必要性が叫ばれる中、両氏の経験も参考に、ゼロイチ人材を計画的に育てる仕組みを作れないか、検証すべきだ。

 日経ビジネスは10月上旬から、読者参加型メディア「Raise(レイズ)」を活用し、読者とともに「ゼロイチ人材の育て方」をテーマに議論してきた(文末を参照)。そこから浮かび上がってきたゼロイチ人材を育てるためのヒントの一つが、吉藤、林両氏もそろって口にした「興味のあることをとことん追求できる仕組み」だ。

未来のゼロイチを育てる

創業者 孫 泰蔵氏
起業家、投資家である孫泰蔵氏。2014年に子ども向けモノづくりコミュニティ運営会社「VIVITA」を設立し、制限なく自由にモノづくりができる環境を提供することで小学生らの創造活動を支援する
(写真=竹井 俊晴)

 起業家でベンチャーキャピタルのミスルトウ創業者の孫泰蔵氏も、好きなことを追求する場所を学校の外に作ることにこだわる。孫氏が夢中なのが、2014年に立ち上げた「VIVITA」の活動。千葉県柏市に拠点「VIVISTOP」を設け、小学生らの創造活動を支援している。

 「VIVISTOP」には、学校や一般の習い事教室にあるような、教科書やカリキュラムは一切ない。代わりにあるのはあらゆるモノづくりの道具。クレヨンや絵の具はもちろん、のこぎりやドライバー、3Dプリンターもある。

 モットーは「ノーリミット(無限大)」。大企業やスタートアップのエンジニアやデザイナーといった大人たちが、子どもたちの「創りたい」という気持ちをサポートし、実現へと導く。

 しばしば、「VIVISTOP」に顔を出す孫氏。抱えるのは現在の学校教育に対する強い危機感だ。「従来型の知識偏重教育を受けていては、大人になるころにはAI(人工知能)にとって代わられてしまう。モノ作りを通じて無限の可能性を実感させ、AIに代替されない創造力を養いたい」と話す。

 VIVITAのターゲットは小学生が中心だが、中高生向けに教育改革に取り組むスタートアップも現れている。開成高等学校での非常勤講師経験がある水野雄介氏が、10年に設立したライフイズテック(東京・港)もその一社だ。

ライフイズテックの水野雄介CEOは、「プログラミングを学ぶ中高生が20万人を超えれば野球のようにスターが生まれやすくなる」と説く(写真=北山 宏一)

 「中高生は教育で大きく成長できる時期。一人ひとりの可能性を最大限に伸ばしたい」。そんな思いで取り組むのがプログラミング教育である。

 水野氏自身はプログラミングの素人だが、創造力を養うには格好の手段と考えている。プログラミングができれば、コンピューターを使って自分のアイデアを形にできるからだ。

 教室への参加者は延べ3万6000人を超え、国内最大規模に成長した。それでも、「まだまだ母数を増やす必要がある」と水野氏。「野球は中高生20万人が取り組むから、イチローや大谷翔平のようなスターが生まれる。プログラミングも同規模になればスター(ゼロイチ人材)が次々と生まれるようになる」と裾野拡大の必要性を説く。