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関西で中小企業の跡継ぎが家業を生まれ変わらせようと動き始めている。地域経済の地盤沈下に抗い、「革新」を成功させた先輩たちがコーチ役に。廃業危機をどう乗り越えるか。全国の中小企業再生のモデルにもなり得る。

(写真=太田 未来子)

 「もっと輸出を増やしたいのだけどそれには壁があって……」

 2018年10月24日、大阪市北区のビルの一室で30歳前後の若手経営者10人が議論を始めた。集まったのは金型部品、寝具、和装小物など業種も業態もまちまちな関西地区の中小企業の後継者たち。目的は「どうやって家業を作り替えるかのアイデアをぶつけ合うこと」(大阪市の老舗刃物店、一文字厨器の3代目、田中諒専務)。発想を磨いて生き残る中小企業になろうというのだ。

 この日、議論の中心になったのは、大阪市の貿易会社、小林順蔵商店の2代目の次男、小林研二朗専務。同社はもともと羊毛の輸入が柱だったが、5、6年前から日本酒の輸出を始めた。

 もっとも、大手メーカーの日本酒は既に輸出されているし、代理店も固定的で拡販は容易ではない。そこで個性のある地方の中小酒蔵を開拓して海外に売り込むアイデアを発表した。これに対して即座に「希少性のあるお酒の情報はあまりない。競争力にはなるが、どうやってデータ化するのか」と疑問を呈したのは和装かばんメーカー、巽クレアティフ(大阪市生野区)の3代目、高柳実製造部長だ。異なる業種の跡継ぎ経営者たちが思い思いの意見をぶつけ、議論は白熱した。

若手経営者らが事業革新プランをぶつけ合う「壁打ち」会。右は小林順蔵商店の小林研二朗専務(写真=菅野 勝男)
日経ビジネス2018年11月19日号 48~53ページより目次