日本企業が価格競争からなかなか抜けられない。需要が伸びず供給過剰が収まらない事情はあるが、企業戦略にも課題はある。価格政策の見直しや高機能品の提案は、デフレ脱却の有効策にもなる。

 「『アベノミクスはいよいよクライマックス。地方にあまねく政策の効果が行き渡るよう、特段の努力を』と(安倍晋三)総理から指示を受けている。デフレを脱するため、取引先から過度に安く仕入れて安売りすることは控えてもらいたい」。10月中旬、日本百貨店協会や新日本スーパーマーケット協会など流通9団体のトップとの会合で、世耕弘成・経済産業相はクギを刺した。

 政府高官が民間企業の価格政策に言及し、注意を促すのは異例のことだ。それだけ、現在の日本でデフレ圧力が再び高まっていることを示している。

 総務省によると、全国の消費者物価指数の前年同月比の伸び率は、「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」の場合、ここ1年、1%に満たない。今年9月にはついにゼロ(横ばい)になった。「生鮮食品を除く総合」に至っては昨年夏以降、マイナス圏での推移が目立つ。指数の伸び率は、2014年4月には大きく跳ね上がったが、これは消費税率が5%から8%に上昇し、税込価格が上がったことによるもの。消費税の影響を除くと、この20年余り、一貫して大きく上昇していない。日銀の黒田東彦総裁は11月1日、「物価上昇率2%」とする目標の達成時期を「2018年度頃になる可能性が高い」と話し、従来の「17年度中」から先送りした。

物価は下落基調をたどる
●全国の消費者物価指数(前年同月比の上昇・下落率)
出所:総務省

 バブル崩壊後、20年以上のデフレの中で、日本の消費者は低価格の商品を買うことにすっかり慣れてしまった。全体の消費額がなかなか伸びない状況が続き、モノを売ろうとメーカーや小売りが値下げを繰り返す悪循環を招いた。

 値下げを繰り返すのは、同業他社が乱立する中で、少しでもシェアを高めようとする目的も大きい。特に企業ごとで商品の差別化が難しい業界で顕著に見られる。

 一例が清涼飲料で、国内首位のコカ・コーラグループでもシェアは3割に満たない。3~5位のアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園のシェアはいずれも1割強で団子状態だ。各社は少しでもシェアを高めようと膨大な販促費を投じ、2リットルのペットボトルなど大容量の飲料を中心に値下げ販売も許容する動きが続いた。結果として営業利益率は1割に満たない。