「トランプ氏にキスされ、体を触られた」。米共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏が再び逆風にさらされている。かつてテレビ番組で共演した女性らがこのように訴えたのを機に、セクハラ疑惑が高じているのだ。10月19日に開かれた第3回テレビ討論会でトランプ氏は「事実ではない。(米民主党候補のヒラリー)クリントン陣営が扇動した」と強弁したが説得力は感じられなかった。

 11月8日の米大統領選挙の投票日が約1週間後に迫った現在、世論調査の多くが、クリントン氏の優勢を示す。だが、選挙の結果は開票が終わるまで予断を許さない。

 トランプ氏が当選する可能性も十分に残っている。同氏はなぜか暴言が致命傷にならない。7月末、「米国のタブー」を破り、米兵遺族を中傷する発言を口にした。ここで支持率を5ポイント落としたものの、9月半ばには、クリントン氏との差を1%にまで縮めた。

 クリントン氏は健康面の不安を払拭できていない。投票日までに再び体調を崩すことがあれば支持率は急降下しかねない。英国民が国民投票でBREXIT(欧州連合=EUからの離脱)を決めたことを振り返れば、「まさか」は依然として起こり得る。

ビジネスで鍛えた交渉力

 そこで日経ビジネスは「もしトランプ氏が大統領になったら…」という仮定の下、世界の政治、経済、社会にどのような影響を与え得るか、経営者や研究者などの意見を聞いた。

 ここでは、その前提となるトランプ氏の人物像と政策を振り返る。

 ドナルド・ジョン・トランプ氏は1946年生まれの70歳。ドイツ系の裕福な不動産業者、フレッド・トランプ氏の第4子として米ニューヨーク市クイーンズ地区に誕生した。父フレッド氏は頑固なビジネスマンで、トランプ氏はこの気質を受け継いだようだ。

 子供時代は問題児で、小学校の教師にパンチをお見舞いしたことを自伝で告白している。本人いわく、「強引なやり方で自分の考えを分からせようとする」性格だった。現在のトランプ氏の原型は少年時代には確立していた。

 米ペンシルベニア大学で経営学を学んだトランプ氏は父親の会社を手伝い始める。会社の実権を握るとマンハッタンへ進出し、数々の大規模案件を成功させた。マンハッタン西岸の広大な鉄道操車場を、世界有数の高級コンドミニアムが立ち並ぶ地区に変貌させる。5番街にそびえるトランプタワーをはじめマンハッタンのランドマークを数多く作ったのは周知の通りだ。

 「破廉恥なトランプ」の大合唱の声にかき消されがちだが、並外れたリーダーシップと交渉力の持ち主と評価する向きもある。

 ただし手痛い失敗も犯している。90年代半ば、ホテル事業などを経営破綻させ、9億ドル(約940億円)を超える損失を生み出した。その後、事業を再び軌道に乗せているが、破綻に伴って多額の税額控除を受けていることが10月に明らかになり批判を浴びている。

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