台湾経済の屋台骨を支える電機産業が苦戦を強いられている。中国大陸勢の台頭に加え、政治面でも大陸との関係に緊張が走っている。成長軌道に乗ろうともがく台湾企業の姿を追った。

10月中旬、中国のEC(電子商取引)最大手であるアリババ集団が地元杭州市(浙江省)で開催したイベント。ビッグデータやAI(人工知能)を使い杭州市全体を管理するスマートシティープロジェクトの発表で、意外な人物が登壇した。EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長だ。
「ビッグデータとは、昔で言えば(三国志に登場する名軍師の)諸葛亮のようなもの。我々が今日ここに来たのは、ビッグデータをどう使えばいいかを学ぶためだ」
郭董事長はこう語り、傘下の富士康科技集団(フォックスコン)がスマートシティーのプロジェクトに参加することを表明。クラウドやAIといった最先端のIT(情報技術)を貪欲に取り込んでいく姿勢を打ち出した。
鴻海は今、事業構造の転換を迫られている。米アップルの「iPhone」や「iPad」などの受託生産で知られる同社だが、単なる「組み立て屋」からの脱却を模索している。今年8月、約4000億円を投じて液晶技術などを持つシャープを買収したのはその象徴だ。
直近ではこれまで手薄だったITサービス事業を強化。インドの対話アプリ、ハイク・メッセンジャーのほか、モバイル広告やECベンチャーなどに相次ぎ出資している。杭州市のプロジェクトに参画したのも、IT事業を今後強化していくためだ。
転換が迫られているのは鴻海だけではない。台湾の経済構造そのものが今、大きな岐路に立たされている。
台湾経済部統計処によると2015年の海外受注額(4518億米ドル)のうち、電機関連製品は58.6%を占める。その台湾電機産業の成長を支えたのは、紛れもなく中国だ。中国の安価な労働力にいち早く目を付け工場を建設、家電製品やパソコンを大量に生産して世界中に売りまくってきた。
しかし、ここ最近、台湾が得意とする領域に中国大陸勢が入り込んできた。
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