「夫が働き、妻は専業主婦」の家族モデルが崩れ、転勤に応じにくい人が増えている。政府も企業に対し、「社員の都合に配慮を」と呼びかける。転勤を通じたキャリアや人生設計への関与を嫌う人も増え、企業は戦略転換が必要だ。

(写真=DAJ/amanaimages)

 大手資産運用会社に勤める太田孝雄さん(仮名・41歳)は、昨年6月、会社からニューヨーク転勤を命じられた。2カ月後に渡米し、現地の機関投資家相手のセールスマネジャーに就くよう内示を受けた。事前の打診はなかったが、ニューヨーク勤務は、将来の幹部候補がたどる道の一つ。孝雄さんは異動の話が出たことに喜んだが、一つ気がかりなことがあった。

 同じ会社で総合職として働く妻の君子さん(37歳)のことだ。異動を聞かされたのは、あと1カ月ほどで第2子の出産予定となり産休に入ったばかりのタイミングだった。保育園に通う4歳の長男もいる。

 君子さんは子供が2人になった後も共働きを続けるつもりだったが、日本で2人の子供の世話を1人でこなしながら働く自信はない。孝雄さんと渡米し、日本に戻った後も働けるよう会社にかけあうことにした。だが、「前例がないので認められない」。回答は期待に添うものではなかった。