小泉純一郎元首相の主導した「郵政民営化」の開始から、10月で10年が経過する。官業を効率化し、日本経済の一助とする理想から、懸け離れた現実が目の前にある。国民の財産でもある日本最大級の企業グループをむしばむものの正体とは。

(写真=郵便ポスト:DAJ/Getty Images、西川氏:読売新聞/アフロ、斎藤氏・坂氏:時事、西室氏・長門氏:北山 宏一)
(写真=郵便ポスト:DAJ/Getty Images、西川氏:読売新聞/アフロ、斎藤氏・坂氏:時事、西室氏・長門氏:北山 宏一)

 「終わったな」。6月上旬、日本郵政関係者は、そう言ってため息をついた。

 価格など諸条件が最後まで折り合わず、野村不動産ホールディングスの買収が不発に終わったためだ。それからおよそ2週間後、交渉終了を知らせるリリースが正式に公表された。

一度も増収になったことがない
●日本郵政の売上高(経常収益)と純損益の推移
<span class="red">一度も増収になったことがない</span><br /><small>●日本郵政の売上高(経常収益)と純損益の推移</small>
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 交渉が始まったのは昨年9月ごろ。元総務次官の鈴木康雄上級副社長が自ら乗り出すなど、さながら“総力戦”の様相を呈した交渉は結局、実を結ぶことはなかった。

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