男性が家事や育児に積極的に関わる「イクメン」という言葉はすっかり定着した。だが、イクメンは周囲の理解が得られず、上司は働き方改革と実態との板挟みに苦しむ。突破のカギは、職場の基盤づくりができる「イクボス」をいかに増やせるかにある。

(写真=左2点・下:アフロ、右:Manzo Niikura/orion/amanaimages)
(写真=左2点・下:アフロ、右:Manzo Niikura/orion/amanaimages)

 「イクメンブルー」という言葉があるのをご存じだろうか。今、理想のパパを目指し努力しているのに、妻の期待や職場との関係など現実とのギャップにストレスを感じる男性が急増しているという。

 東京都に住む木内康弘さん(仮名、39歳)は、昨夏に第2子を出産した妻が4月に職場復帰した。復帰2日目、妻が得意先の社長に会うため約束の場所に向かおうとしたら、子どもが熱を出した。「すぐ迎えに来てください」。保育園からの電話に対し、大事な予定を抱えている妻から、迎えに行くよう連絡が入る。

 しかし、康弘さんも部内の今後1年間の方針を決める大事な会議が予定されており、対応できない。「無理だよ。僕だけ抜けるなんてできない」。妻からの電話にそう答えると、妻は無言で電話を切り、約束をキャンセルした。

 共働き家庭の増加で、仕事だけでなく今まで女性が担っていた家事・育児などに男性が関わるのはもはや当たり前となった。だが、男性が家庭の仕事に関与すればするほど、康弘さんのような「事件」が日本中で勃発している。

 妻からは「家事・育児への貢献が足りない」と責められる一方で、職場では長時間労働など働き方が変わらない。「子どもの具合が悪いので午前休を取りたい」と申し出ると「奥さん休めないの?」と切り返される。

 「イクメンという言葉が定着する一方で、職場と家庭の間で板挟みとなり、悩む男性が増えている」と父親の育児参加を推進するNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さんは話す。

 企業に目を転ずれば「男女共同参画室」「ダイバーシティー推進室」などを設けてイクメンをサポートしようとする動きが表面上は広がっている。だが制度を推し進めようとするトップの方針と、現場の動きはかみ合っていない。

 例えば男性の育児休暇。厚生労働省が5月に発表した2016年度の男性の育児休業取得率は過去最高を記録したが依然3.16%と、女性の81.8%と比べても雲泥の差だ。休暇の平均日数も5日未満が約6割(15年度)を占めていて「制度はあっても休めない、休みづらい」状況が浮かび上がる。

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