中国人による「爆買い」が沈静化した訪日消費。だがここに来て、全体に勢いを取り戻している。要因を分析すると3つの変化が浮かび上がる。

<b>韓国から旅行で大阪に来た18歳の女性2人(左)。ドン・キホーテで雑貨を購入したり(上)、とんかつやカツカレーを食べるなど(下)、街歩きや食事を楽しんだ</b><br />(写真=左、上:菅野 勝男、下:チャさん提供)
韓国から旅行で大阪に来た18歳の女性2人(左)。ドン・キホーテで雑貨を購入したり(上)、とんかつやカツカレーを食べるなど(下)、街歩きや食事を楽しんだ
(写真=左、上:菅野 勝男、下:チャさん提供)

 江崎グリコの巨大看板で知られる大阪の戎橋。人混みの中、ディスカウント店「ドン・キホーテ」に向かう2人の女性がいた。「初めての海外旅行です」。照れながら話すのは、18歳のチャ・ヒョウリンさんとユン・イェチさん。高校の同級生の2人は、夏休みを利用して3泊4日で日本にやってきた。

 ドン・キホーテで購入したのは、足に貼るライオンの日用品「休足時間」や招き猫の人形など。2人はほとんど同じものを「おそろい」で購入していた。その後、チャさんは百貨店に行ってスニーカーや洋服を、ユンさんは日本の男性アイドルの雑誌を買って帰りたいと話した。購入する商品は出発前に韓国の検索サイト「ネイバー」で調べてあり、ほとんど「目的買い」だ。「日本は、近いし、短期間で楽しめるし、初めての旅行にぴったり」と笑う。

 今年1~6月に日本を訪れた外国人旅行者は1375万7300人で、前年同期に比べて17.4%増えた。訪日客の消費額は上半期の累計で初めて2兆円を突破し、再び加速している。こうした勢いを支えるのが韓国人旅行客で、42.5%も人数が増えた。その結果、上半期の国・地域別の人数では、韓国が中国を抜いて4年ぶりに首位に躍り出た。

上半期の訪日旅行客は韓国が4年ぶりにトップに
●国・地域別の訪日客数の割合
<b>●国・地域別の訪日客数の割合</b>
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●韓国の年代別訪日観光客数(年間)
<b>●韓国の年代別訪日観光客数(年間)</b>
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  • 注:韓国の年代別訪日観光客数は、JNTOの訪日観光客数に、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」における「観光・レジャー」目的の年代比率を乗じた推計
  • 出所:日本政府観光局(JNTO)

LCCとグルメがけん引

 大きな要因は、ティーウェイ航空やチェジュ航空など韓国と日本を結ぶLCC(格安航空会社)の増便だ。国土交通省によると、今年の夏は、日本発着の韓国系LCCは1週間当たり480便を超え2年前の2倍以上に増えた。

 特徴的なのは20代以下の訪日が急速に増えていることだ。昨年、韓国から訪れる観光客のうち約4割が20代以下の若者だったようだ。韓国では「君の名は。」など日本のアニメが人気なほか、テレビ番組「孤独のグルメ」も放映されるなど、日本の食に対する関心が高まっている。冒頭の女性2人組も、カフェでケーキを食べながら休憩し、昼食や夕食にはカツカレーやとんかつを食べるといったように、街歩きと食事を楽しんでいた。

 若い世代が多くを占めることもあり韓国人の旅行中の消費額は、中国からの観光客に比べると少ない。観光庁の調査によれば、2017年4月から6月における、韓国の1人1泊当たり費目別旅行支出(観光・レジャー目的のみ)は、2万2528円。中国の3万8818円に比べて低いが、主な要因は「買い物」への出費が少ないからだ。

 だが逆に、飲食費は韓国が5591円で、中国の5522円を上回る。娯楽・サービスは、韓国が1183円で、中国が893円と約1.3倍の差がある。若い韓国人は購買力には限界があるが、情報への感度は高い。うまくファンになってもらえれば、企業にとっては恩恵が長く続くだろう。

 例えば、大阪市内の商業施設「心斎橋オーパ」の5階にあるカフェ「ライトハウスコーヒー」には、1日5組程度の韓国人が訪れる。特に宣伝したこともなかったが、調べてみると、韓国語の記述がついたインスタグラムへの画像投稿が広く共有されていることが分かった。自社のアカウントでの情報発信にも韓国語を記すようにしたところ、さらに韓国人観光客は増加した。

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