かつて建材などに使われた石綿(アスベスト)の健康被害が止まらない。今や中皮腫と呼ぶ特殊ながんの犠牲者数は年1500人以上。累計で2万人を超えた。海外に比べても対策が手ぬるいとされる日本。「時限爆弾」が企業に牙をむく。

<b>ビルの柱や梁にある「吹き付け石綿」の除去工事現場。発がん性があるため防塵マスクや防護服が欠かせない</b>
ビルの柱や梁にある「吹き付け石綿」の除去工事現場。発がん性があるため防塵マスクや防護服が欠かせない

 この1年で新たに提出された救済金請求は13件。いまだに被害者は増え続けているのです」。6月24日、兵庫県尼崎市で開かれたある集会で、尼崎労働者安全衛生センターの飯田浩事務局長はこう訴えた。

 会合を催したのは、石綿(アスベスト)による健康被害に遭った人たちで作る団体だ。尼崎市には、かつて原料に石綿を使ったセメント管を製造していた工場があった。機械メーカー、クボタの旧神崎工場である。40年以上前にセメント管の製造をやめたが、2005年にこの工場の周辺住民の健康被害が判明。当時3人だった被害者は「すでに亡くなった方が309人、現在療養中の方が16人で、合計325人にのぼる」と飯田事務局長は話す。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り5375文字 / 全文文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「SPECIAL REPORT」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。