「鴨川の水、双六の賽…」。平安期、白河上皇が意のままにならないと考えた気象。1000年後の今、ITの進化によってほぼ正確に予測することが可能になった。気象予報のビジネス活用という巨大市場が生まれ、異業種からの参入が相次いでいる。
部屋から人が出るのをセンサーが感知すると、自動的に窓のブラインドが閉じられ、壁から涼しい空気が流れてくる──。
ドイツの首都ベルリン郊外にある住宅地。ここで、いかにエネルギー消費量を抑え、快適な生活を送れるかの実証実験が進められている。エネルギー管理システムを手掛けるのは、仏電機大手シュナイダーエレクトリックだ。
「スマートグリッドでは電気の有効利用を想起する人が多いが、水やガス、熱などとの組み合わせも重要。自動車にも対象を広げれば、交通渋滞の緩和など街全体で省エネを進められる」。実証実験のプロジェクトマネジャー、ヨハネス・シギュラ氏はこう語る。
シュナイダーのオフィスにあるモニターでは、街全体のエネルギー生産と消費動向をリアルタイムで表示している。風力・太陽光発電などの自然エネルギーは環境への負荷は小さいが、天候の影響を受けやすく稼働が不安定。そこで、シュナイダーのオフィスでは正確な気象予報データを基に自然エネルギーの稼働計画を作っている。
刻一刻と変化する風向きや風力を予測し、風力発電のブレードの向きを変える。日照時間から太陽光発電の出力を予測し、足りない電気はガス火力発電などで補充する。こうした気象予報データは、ベルリンから西へ7000km以上離れた米国北部のミネアポリスから送られてくる。
「我々は世界中の17の気象予報モデルを組み合わせ、独自のシステムを生み出した。1日先までの予報の精度は96%に達しており、ほぼ間違えることはないよ」。ミネアポリス郊外にオフィスがある気象予報部門トップのジョン・ライフシュナイダー氏は胸を張る。シュナイダーは2011年、米国の気象予報会社を買収。1万社を超える顧客企業に気象予報を提供している。
農家や航空会社、アパレル…
●気象予報が使われている主な業界と活用例
主な業界 | 気象予報情報の活用例 |
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気温動向などを基に「売れる商品」と「売れない商品」を予測、ロスや在庫を減らす |
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1カ月以上先のエアコン、冷蔵庫などの売れ行きを予測、生産ラインの人員管理に活用する |
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太陽光、風力発電など再生可能エネルギーの稼働を予測、ベース電源の発電量を調整する |
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災害予測を提供し、保険料の支払い総額を抑える。天候デリバティブ商品の価格設定にも |
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台風・ハリケーンの動向から洪水などを予測、事故やインフラへのダメージを未然に防ぐ |
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農作物の収穫量・品質などを予測、収益の安定に役立てる。種まき、収穫のタイミングも助言 |
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