地域商社がアンテナショップ

<b>ウラジオストクに設けたアンテナショップで消費者の反応を探る</b>
ウラジオストクに設けたアンテナショップで消費者の反応を探る

 このプロジェクトにおける資材の輸出などの煩雑な実務を支えた日本企業がある。北海道銀行やホームセンターのDCMホーマックなど計9社を中心に1億円の出資で15年10月に設立された北海道総合商事(札幌市)だ。

 自社だけで海外に進出するのが難しい中堅・中小企業の共通部門として、小回りの利く「地域総合商社」を目指す。社長はロシアでの駐在歴もある元銀行マンの天間幸生氏。従業員数13人の小所帯ながらサハリンプロジェクトの経験者らが脇を固める。

 所変わって人口約60万人の極東の中核都市、ウラジオストク。古くから港町として発展してきた中心部では北海道総合商事が主体となったプロジェクトが進行している。オフィスビルや役所の立ち並ぶ一角にその場所はある。北海道産品などを扱うアンテナショップ、名付けて「まんぷく猫」だ。

 何気ないビルに設けられたコンビニエンスストアほどの広さの店内では、コメや玉ねぎ、加工食品、飲料など日本の数社の商品が並ぶ。出品企業は陳列スペースに応じた料金を払うことで、ロシアの消費者や小売店のバイヤーの反応を探ることができる。目下、日本の約40社と商談が進んでおり、5月中にも本格開業する。

 日本企業がロシアに進出する際には、金融機関の役割も重要になる。「通常、地方銀行は日本の地元企業の後追いで海外に出るが、当行はその逆を行く」。そう強調するのは北海道銀行の三上訓人ロシア室長だ。

 一般的に地銀は海外進出した地元企業が一定数に達し、金融や情報収集のニーズが出てきた段階でようやくその国に出店する。

 だが北海道銀は09年にユジノサハリンスク、14年にウラジオストクと先手を打って拠点を開設。ハバロフスク市やサハリン州など極東地域の自治体や金融機関など、ロシアにおける業務提携先は既に8つに上る。このネットワークを活用し、取引相手となるロシア企業の目利きなど、実務に欠かせない情報の精度を高めている。

 ロシア進出には何かと不安が付きまとう。だからこそ銀行がまずロシアに足場を作ることで、顧客の中堅・中小企業に安心感を与えて、背中を押す。

 北海道銀を頼るのは地元、北海道の企業だけではない。様々なカントリーリスクを抱える世界各地でプラント建設を遂行する日揮もだ。日揮はハバロフスクでの野菜栽培用の温室建設にあたり、現地事情をよく知る北海道銀に協力を要請した。温室事業を運営する企業には北海道銀系のファンドが出資。冒頭に紹介したヤクーツクと同様、順調に事業が進んでいるという。

 このようにロシア進出を支えるインフラの整備が進む中、独自の技術や品質を武器に市場開拓を本格化させる動きが加速している。

INTERVIEW
北海道総合商事 天間幸生社長に聞く
ロシアでも利益を出せる
<b>みちのく銀行、北海道銀行でロシアを担当し、2015年12月から現職</b>(写真=新津 良昌)
みちのく銀行、北海道銀行でロシアを担当し、2015年12月から現職(写真=新津 良昌)

 2015年までは銀行員の立場でロシア進出支援に携わってきたが、日ロ企業をビジネスマッチングしても、実際のところ継続的な成果がなかなか出にくいと感じていた。原因として、代金決済や信用リスク、契約、物流、ロシア語などいろいろな不安が重荷となってきた。

 こうした面倒な点について、北海道総合商事がサポートする。大手商社とはなかなか取引しづらい中堅・中小企業に密着するところに存在意義がある。企業・商社(北海道総合商事)・銀行(北海道銀行)の三位一体でビジネスのリスクを低減したい。

 ロシアの市場に受け入れられるかどうかを試す、ウラジオストクでのアンテナショップも同様の発想で開設する。いきなり日本の中堅・中小企業がロシアのスーパーと本格的な商談をするのは難しい。かといって、個々の企業が店を構えるのはもっと大変だ。アンテナショップがあれば様々なコストを現実的に広く薄く分担できる。一時のブームではなく、継続的にビジネスを続けるには自立した民間ベースの活動が大事だ。

 ロシアは豊富な天然資源を背景とした魅力的なマーケットだ。一方で日本からの進出企業は少なく、しかも大手中心。場所もモスクワなどヨーロッパ方面に偏っており、極東方面は手薄だ。日本の中堅・中小企業の品質や技術力があれば十分勝負していける。隣国でありながら認知度が低く、先行者のメリットを生かせるフロンティアだ。

 日ロ両政府の連携は追い風だ。何かできそうな雰囲気が高まっており、日本企業もロシアビジネスに前向きになりつつある。北海道総合商事にも月に数十件の相談があり、手応えを感じている。

 よく「ロシア人は契約を守るのか」と聞かれるが、結論としては守る。みちのく銀行での住宅ローンもすべてきちんと返済してもらった。継続的に事業を続けるため、北海道総合商事としても、きっちり利益を出すことにこだわる。初年度の16年12月期の売上高は3億円強、営業損益は400万円の黒字を確保できた。農業資材や建材、農産品の輸出業務が奏功した。

 商社としてのサービス力に一段と磨きをかけ、17年12月期は売上高を10億円に伸ばすのが目標だ。旅行会社と組み、関心のある企業がロシアの見本市などに気軽に訪れることができる企画も提案したい。(談)

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