2017年前半、欧州政治で最も注目を集める仏大統領選挙が4月23日に迫った。長期の経済停滞に国民は変化を渇望し、極右政党・国民戦線のルペン候補が広く支持を集める。反EUを掲げる「ルペン大統領」が誕生すれば、EUの混乱は必至。欧州の将来はますます霞みがかる。

反EUを掲げる国民戦線のマリーヌ・ルペン候補に注目が集まる(写真=Sylvain Lefevre/Getty Images)
フランス大統領選

5年に1度実施される選挙で、今回は11人が立候補した。「単記2回投票制」を取り、4月23日の第1回投票で有効投票総数の50%+1票以上をどの候補も獲得できない場合、上位2人の間で5月7日に決選投票が実施される。決選投票は、最も多い票を得た候補者が当選する。1965年以降、第1回投票で大統領が決定した例は一度もない。

 英国の欧州連合(EU)離脱、米大統領選挙に続く、3度目の「まさか」は起きるのか。 大和総研の欧州拠点、ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫シニアエコノミストの元には連日、日本の金融機関からの電話が鳴りやまない。問い合わせの多くが、4月23日に迫ったフランス大統領選の行方を確認するものだ。

 最大の関心は、有力候補の一人、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首が選挙に勝つ可能性があるのかどうか。ルペン候補は、大統領就任後の公約として①フランスのEU離脱を問う国民投票の実施②EU加盟国同士の国民がEU域内を自由に移動できるシェンゲン協定からの脱退③通貨ユーロを廃止し、旧フランを再導入──などの政策を掲げている。

 いずれも、EUの理念に反するもので、これまで進めてきた欧州統合を大きく後退させかねない。ルペン候補が公約をすぐに実現させる可能性は低いものの、EU主要国のフランスに「反EU」を掲げる大統領が誕生すれば、欧州が大混乱に陥るのは必至だ。「短期的には株式市場、通貨ユーロ、仏国債が急落(=金利は上昇)するだろう」と菅野シニアエコノミストは言う。昨年6月、英国がEU離脱を決めた国民投票後と似た状況が再現される可能性がある。

 特に、日本の金融機関が懸念を抱いているのが、ここ数年保有比率を高めてきた仏国債の行方だ。仏国債庁によると、同国の国債発行額は、2016年9月時点で1兆6000億ユーロ(約189兆円)超にのぼり、そのうち6割は外国人投資家が保有する。

 日本の金融機関の購入比率について、正確な統計はないが、「地方銀行も含めて多くの金融機関が保有している」と菅野シニアエコノミストは言う。仮にルペン候補が大統領になれば、価格が急落し、保有資産の含み損の計上を迫られる恐れもある。多くの金融機関が、大統領選前にフランス国債を売却すべきか否かの難しい判断を迫られている。

もし「ルペン大統領」が誕生したら
●ルペン候補の主な反EU公約と勝利した場合の世界経済への影響
1ユーロ下落、日本には円高要因に
●通貨ユーロの推移
2国債が急落(金利は上昇)、日本の金融機関に影響も
●フランス国債の金利推移
3株式市場が下落、世界景気に冷や水