所有者不明の土地が増え続け、2040年には北海道並みの広さになるとの推計もある。人口減のほか、不十分な不動産登記制度、土地に対する意識の変化などが背景に。再開発や防災の障害になるばかりか、日本経済の足も引っ張りかねない。

 東京都品川区旗の台。高級住宅地にほど近い静かな街の中に、そこだけ周囲と風景が異なる一画がある。

 約1000m2の土地に47棟の木造住宅がひしめき合う。1棟平均の敷地面積は6.4坪(約21m2)ほど。築50年を超えたような古くて小さな家が密集する。区画の中に3筋ある通路はどれもわずか幅1mほど。まるで戦後間もない頃にタイムスリップしたような錯覚に襲われる場所だ。

 ここに日本が抱える大問題が潜んでいる。「所有者不明土地」という問題だ。

<span class="fontBold">古い木造家屋が密集する東京都品川区旗の台の住宅地</span>(写真=菊池 一郎)
古い木造家屋が密集する東京都品川区旗の台の住宅地(写真=菊池 一郎)

 「将来起きるかもしれない首都直下型地震などの災害に備えて、区では住宅などの密集地区はできるだけ道路を広げ、公園を整備するといったことを考えている。しかし、ここには所有者の分からない土地が8カ所もあって簡単には進まない」

 品川区の高梨智之・木密整備推進課長はこう言って腕組みをする。この一画にある住宅4棟、通路用地4カ所の計8カ所の土地で所有者が分からず、地区の再開発が進まない原因の一つになっているというのだ。

 こうした所有者不明の土地が全国各地に増えている。所有者不明土地とは広い意味では、不動産登記簿などの所有者台帳で本当の所有者が分からないか、分かっても連絡がつけられない状態の土地などを指す。旗の台の例はほんの一部にすぎない。

 「2015年に市内の空き家2806棟について所有者に家屋の使用調査を行ったが、所有者不明で調査票を送付できないものが479あり、宛先が違っていて返送されたものも142あった」

 こう話すのは山形県鶴岡市の早坂進・都市計画課長。同市は12万8318人の人口(18年2月末)を抱えるが、高齢化が進み、35年には10万人を割ると推計されている。市では「00年以降、中心部に公共施設を集めるなど、利便性を高め、街の魅力を高める努力をしてきた」(早坂課長)。それでも空き家の増加は続き、持ち主を捜すことも容易ではない厳しい戦いが続いている。

 約38万人が暮らす長野市も同様。同市は昨年3月、「空き家8063軒について調査をしたが、約5000軒は登記簿などでは所有者が分からず、手間をかけて調べるほかない状況」(水嵜祐一・建築指導課係長)だという。

2040年には持ち主の分からない土地が 北海道と同じ面積に!?
●「所有者不明土地」の広さの推計
 <span class="textColGreen">2040年には持ち主の分からない土地が 北海道と同じ面積に!?<br />●「所有者不明土地」の広さの推計</span>
出所:所有者不明土地問題研究会の資料を基に本誌作成
[画像のクリックで拡大表示]

 所有者不明土地は一体どれだけあるのか──。元総務相で野村総合研究所顧問の増田寛也氏を座長に、民間有識者らで組織する所有者不明土地問題研究会の推計によると、16年時点で所有者がすぐに見つからないか連絡がつけられない土地は全国で約410万ヘクタール。九州を少し超える面積に広がっている。増加はさらに続き、40年には約720万ヘクタール、北海道とほぼ同じ面積になる恐れがあるという。

次ページ 100年前の登記も残る