東日本大震災の被災地における中小企業支援の枠組みが熊本にも導入されている。東北の反省を生かした制度見直しが奏功し、熊本での倒産件数は半世紀ぶりの低水準となった。しかし、補助金の効果が切れた企業の倒産が東北では増え始めており、不安はぬぐいきれない。

牛深水産の三瀬広海社長(左)は流通業者などと連携し、店舗の復旧と新規事業に取り組む(写真=左:荒川 修造)

 「ずっと余震におびえて仕事をしてきた。ようやくここから抜け出せる」。熊本市で水産物の加工・卸を手掛ける牛深水産の三瀬広海社長はこう語り、安堵の表情を浮かべる。

 3月末に熊本県玉名市に新たな社屋が完成する。熊本市の市場内にある現社屋は、昨年4月の熊本地震で大規模半壊。窓は割れ、照明は落ち、天井や柱に深くひびが入った。しかし、賃貸物件のため自己判断で本格的な修理はできず、ひびをパテで埋めるなど心許ない処置だけ施し、不安を抱えながら6人の従業員と働いてきた。

 「うちの会社だけでは間違いなく立ち上がれなかった」(三瀬社長)。牛深水産を窮地から救ったのは、グループ補助金。正式名称は「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」で、2つ以上の事業体が組んだグループに、復旧費用の4分の3を補助する。

東日本大震災の反省を受け、見直しが進んでいる
●熊本地震の中小企業支援策
補助制度 概要 実績
東日本 熊本
中小企業等グループ施
設等復旧整備補助事業
(グループ補助金)
2つ以上の事業体のグループに、復旧費用の4分の3を補助。新規設備にも利用可能になったほか、申請書類は大幅に簡易化された ※1
1万1263事業者
4973億円
※1
1609事業者
349億円
小規模事業者
持続化補助金
2013年に始まった小規模企業の補助金を被災企業向けに拡充。上限を50万円→200万円にアップ 25億円
(予算ベース)
二重ローン解消策
(再生ファンド)
地銀や公的機関からの出資金で被災企業の債権を買い取り。各金融機関へ債権カットや返済条件の変更を交渉 ※2
1726件
(金額非公表)
数件
(詳細非公表)
※1:2月中旬時点
※2:1月末時点。中小企業基盤整備機構、復興庁がそれぞれ担当する2つのファンドの合計

 上限は1事業者あたり15億円。東日本大震災を受けて始まり、熊本にも導入された。本来は特定事業の育成のために投じる補助金を、グループを組むだけで支給する「特例中の特例の措置」(中小企業庁経営支援課)だ。しかし、この制度の評価は東北では決して高くなかった。3つの大きな課題が見つかったからだ。

 1つ目の課題が、単純な復旧にしか補助金を使えなかったこと。災害により取引先の喪失などで事業環境が悪化する中、元の設備を復旧しても早晩経営は行き詰まる可能性が大きい。そこで、復旧費用の範囲内で新たな設備も導入できるよう、2015年に制度を変更した。受給額は変わらないが、用途の自由度が増した。単純な復旧を超えた復興を目指す枠組みだ。

 牛深水産も、傘下の居酒屋5店舗の復旧に加えて、新規事業に取り組む。玉名市の新社屋は「大浜地域プロジェクト」と名付けた1次産品の集積拠点の一角に構える。流通業、運輸業、食品卸、飲食店などグループ補助金を受給する8つの事業者で運営する。補助金総額は計約17億円となる見込みだ。

 同プロジェクトを主導する食品販売の熊本ネクストソサエティ、山戸健社長によると、グループの狙いは3つ。農水産業者から直接商品を買い取る拠点を作ること。飲食店などへ農水産品を一括販売し、商品価値を上げること。そしてメンバーが個別にもっていた物流や営業、加工といった機能を集約して効率化することだ。