家計調査だけで判断できない
国友 消費動向をどう捉えるか、というのは複数の視点が交錯するので難しい問題です。今大臣がおっしゃった通り、家計調査は、もともとは「世帯」の消費構造やその動向を見るためのミクロ統計であり、社会全体のマクロの消費動向を示すものではありません。世帯当たりの人員はここしばらく減少が続いています。4人の世帯が一般的であった時代と、今のように世帯の平均人員が3人を切る時代を比べれば、世帯の消費は減って当然です。
一方で、世帯数はまだ増え続けているわけですから、GDPなどのマクロ統計と比較して見る場合には、この点に注意しなければなりません。
渡辺 景況判断は、家計調査だけではなく、他の指標も用いながら、多角的に分析するのが理想なのでしょう。エコノミストをはじめとしたプロのユーザーの方々には、複合的な視点が求められていると思います。
熊谷 確かに、そこが腕の見せどころだと思います。ただ、我々エコノミストはタイミングよくリポートを出さないといけないので、やはり即時性を必要とします。その意味で、速報性のある家計調査の結果は注目していますし、様々な分析でも重要視されています。
一方で、家計調査の月々の振れ幅を嫌う意見も多くあります。確かに小売店舗などを調査対象とする、いわゆる供給側の統計と比べると、消費者側から調査する家計調査の振れ幅は大きいですよね。
国友 家計調査の場合、振れの原因としてサンプル調査の誤差が指摘されることが多いようですが、誤差は供給側統計にもありますし、そもそも月次統計には誤差以外の不規則な変動が存在します。百貨店の売り上げにも、お中元やお歳暮シーズンなどの季節性が含まれますが、政府統計でもこういったものを除去した「季節調整値」などを提供していて、多くの方々はこうした数値を見ていると思います。
しかし、基調的な動きを捉えるにはこれだけでは不十分なこともあり、工夫が求められます。
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