京セラを創業し、KDDIを立ち上げて通信の独占に風穴を開け、破綻した日本航空を再生した。今年1月に86歳になる稲盛和夫氏は、今の日本経済、そして日本の経営をどう見ているのか。景気に楽観ムードが漂う中、社会全体が慢心し努力を忘れることを危惧する。
(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

問 昨年9月に出版した著書『稲盛和夫の実践アメーバ経営』(日本経済新聞出版社)の前書きで、「日本経済はバブル崩壊後、長期にわたる低迷から抜け出せていない」と明言しています。景気拡大が続いているとの認識が広がっていますが、稲盛さんの見方は少し違うようですね。
答 私もあまり悲観はしていません。円安を背景に日本の製品が海外でよく売れていますし、経営も順調にいっている会社が多いというのは、悪いことではありません。けれども、あまり苦労しなくても経営がうまくいっているという状況が、私には心配なのです。
本来、経営というものは辛酸をなめて、苦労して、一生懸命やって初めて、うまくいくというものでなければなりません。会社の業績は、経営トップだけではなく、社員全員が努力をし、辛酸をなめた結果、良くなるものです。ところが、全体的に景気が良くなり、自分の会社も何となくうまくいっているという状況は、実は非常に危険です。
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