電力業界の経営環境が激変する環境の中で社長に就任した。環境負荷が大きい石炭を使うことに厳しい見方もある。イノベーションを取り入れ、一定の石炭を使っていくべきだと主張する。

(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

(写真=的野 弘路)
PROFILE
[わたなべ・としふみ]1977年、東京大学法学部を卒業後、電源開発(Jパワー)に入社。経営企画畑を歩む。2004年の民営化では、民営化準備室長として奔走した。原子力事業本部の副本部長として原発建設に向けた現地交渉も経験。2016年6月から現職。大分県出身、61歳。

電力自由化は設備の改廃を進めよという国の意思。
大間原発は今後10年のうちに稼働させたい。

 問 今年6月に社長に就任しました。

 答 「関係各所への挨拶がようやく一巡したところです。今回は国際事業本部に請われてタイにも行ったんですよ。これまで当社最大の取引先は東京電力ホールディングスだったのですが、前期は順位が逆転してタイ電力公社(EGAT)に代わりました。東電向けの電力販売が細ったわけではありません。タイで大規模発電所が相次いで稼働したためです。当社は海外事業に注力してきましたが、財務諸表にもその成果が如実に表れてきました」

 問 インドネシアでも大規模な石炭火力発電所の建設が始まりました。海外展開が進んでいます。

 答 「国際事業本部には『新しいプロジェクトを探そう』と呼びかけています。これまでインドネシアの発電所に人手を取られていましたが、工事が始まり余裕が出てきました。次の案件を手掛ける好機です」

 「有望なのはアジアと米国でしょう。アジアではEGATのような公的な電力会社向けに電力を卸すIPP(独立系発電事業者)として発電事業を拡大していきます。北米は需要家に対し市場を通じて直接電力を販売するモデルが中心になるでしょう。日本に比べ北米は電力需要がまだまだ旺盛です。競争も激しいですが、この市場を取りにいかない手はありません」

 問 日本では今年度から、電力の全面自由化が始まりました。経営に与える影響をどう見ていますか。

 答 「自由化で発電所は造りやすくなりました。一方で、国内の電力需要が大きく伸びる見通しはありません。つまり供給が過剰になりやすい環境で競争が始まっているということです」

 「消費者に選ばれる発電所と、そうでないところとで今後は優劣がはっきりと表れてくるでしょう。発電所の運営手法や燃料調達の巧拙が問われます。競争力のない発電所は稼働率を高くできなくなり、赤字に陥ることも十分考えられる。自由化の背景には、電力会社の資産の持ち方、つまり設備の改廃を進めて最適化せよという、国の隠れた狙いがあるのかもしれません」

 「この中で当社が劣後するようなことがあってはなりません。幸い、当社は水力と石炭火力という競争力のある資産を抱えています。燃料の面でも、運営の面でも強みがある。既存発電所の建て替えを進め、最新技術の導入も進めています。競争には負けません」