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衣料品に本格参入してきた、米アマゾンとの正面対決に備えて、ユニクロを進化させる考えだ。「服とは情報」と捉えて、無駄に商品を作り過ぎる業界の慣行と決別する事業モデルを作る。散弾銃でなくライフルのように正確に需要を撃ち抜くという。

(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

(写真=竹井 俊晴)
PROFILE
[やない・ただし]1971年早稲田大学政治経済学部を卒業し、ジャスコ(現・イオン)に入社。72年、実家の小郡商事(現・ファーストリテイリング)に転じ、84年から社長。同年、ユニクロ1号店を広島市に出店。90年代後半には1900円のフリースで一大ブームを起こした。会長就任などを経て、2005年から現職。2001年からはソフトバンク(現・ソフトバンクグループ)の社外取締役も務める。山口県出身、67歳。

衣料の作り手よりも消費者は数十段先に進んだ。
近い将来、アマゾンやグーグルが競争相手になる。

 問 ファーストリテイリング(FR)の国内ユニクロ事業の売上高は約7800億円(2015年8月期)です。2020年の全世界の売上高目標5兆円のうち、日本市場ではどのくらい見込んでいますか。

 答 1.5兆~2兆円の間ぐらいだと思います。市場規模が縮小しているので。1995年ぐらいだったと思うんですけど、日米の市場規模調査があって、実は日本の方が大きかったんですよ。当時は16兆円ぐらいで、米国がそれよりちょっと少ない。異常ですよね。まだバブルの余波があって、高級品中心で単価が非常に高かった。当然、今では逆転され、引き離されています。

 問 市場縮小に伴って、アパレル産業全体の不振が鮮明になっています。インターネット通販の急速な普及など、消費の変化に企業が追い付けなくなっているようにも見えます。

 答 確かに、作り手や売り手より、消費者の方が数十段進んでしまったことが一因だと思います。『洋服』というぐらいなんでやっぱり欧米ブランドの方がいい、という借り物の価値観みたいなものがあった。その『ブランド力』みたいな、無形の価値にお金を払ってきました。しかし今は、本当に付加価値があって、生活が豊かになるような要素がないと、服は売れないということでしょう。うちも最近、あまりもうかってないんですけど(笑)。

 過去に『服もコンビニの弁当と変わらない』と言いました。商品は商品ですよ。その感覚が、業界の人に少なかったんじゃないですかね。服やファッションは何か特別なものではなく、他と同じようにお客様がお金を払って買う商品だという認識が足りなかった。うちも昔はアパレルから仕入れて売る業態でしたが、ある会社を訪れた時に『商品は芸術だ』と標語が掲げてありました。それを当然として、世界の水準から見たら異常に高い商品を売っていたんじゃないかなと思います。

 消費者の方も、かつては無理をして高級ブランドの服を着ていた人もいたけれど、今は身の丈に合った消費になったということでしょう。

 問 洋服はもはやコモディティー(普通の商品)になったということでしょうか。

 答 いや、コモディティーかどうかは分からない。僕は服は情報だと思っています。才能があって、世界に何人もいないようなデザイナーだったら、ライフスタイルの提案とかもできると思いますが、普通の日本のデザイナーは服について知らな過ぎる。特に若いデザイナーは思い付きで服を作っている人が多い。それではだめですよ。うちもそうだったんですけど、日本でブランドをやっていると、価値観みたいなものがないんですよね。今、我々は生活に密着した『ライフウエア』という言い方で、価値観を提案しているのです。