住宅ローンは絶対にやらない

 問 確かに、普通の銀行が収益源とする貸出業務をやっていません。

 答 「カードローンは多少やっていますが、提携先の金融機関が主力商品と位置付けるようなもの、例えば住宅ローンは絶対にやりません。我々にとっての顧客である金融機関との信頼関係を大事にしています。顧客と競争するわけにはいきません。もっとも、そういう制約があるからこそ、新たな金融サービスを生み出そうと考え抜けるのかもしれません」

 「例えば海外送金サービスがいい例ですね。有人の出張所は外国人の顧客を店頭に集めてサービスを説明したり、口座開設のお手伝いをしたりする拠点にしています。海外送金だったら提携先の金融機関が主力商品として位置付けているわけではないですから、安心して力を入れられます」

 問 セブンイレブン以外にもATM網が広がっています。

(写真=下:的野 弘路)
(写真=下:的野 弘路)

 答 「2007年ぐらいに、セブンイレブンの全店に置き終わりました。それで、コンビニ以外ならどこに置くかと検討を始めたんですが、当時はそんなノウハウもなく苦戦していました。その頃、『ビジット・ジャパン・キャンペーン』という、官邸が主導した訪日外国人向けの企画がありまして、事務局を担当する国土交通省に相談に行きました。そうしたら、海外のお客さんを迎えるに際して『現金の引き出し拠点が少ない』との苦情が多いということで、うちのATMが喜ばれたんですね。『空港で何か宣伝させてくれたらいいな』ぐらいに思っていたんですが、国交省のお声掛けで成田空港にATMを置いたのが始まりでした。それが順調に広がって、今では2600台以上がコンビニ外にあります。インバウンドでさらに注目を集め、訪日客の間での認知度も相当高まってきています」

 問 その利便性が悪用されて、セブン銀ATMが組織的な不正引き出し事件の舞台にされてしまいました。

 答 「このケースでは、ATMが異常な使われ方をされているということを検知して、すぐに関係方面に連絡しながら出金を止めました。その時間帯が午前5時すぎから同8時ぐらいですから、2~3時間の間はやはり不正に使われてしまいました」

不正対策は間断なく続ける

 「検知にかかる時間を縮めるためのいろいろな工夫を今やっています。偽造カードが作られるのは磁気カードの場合であって、ICカードでは偽造できません。だから、磁気カードの出金上限は5万円から3万円に引き下げ、逆にICカードは5万円から10万円に引き上げました」

 「僕たちはATMを生活インフラだと考えています。そのインフラが犯罪に使われるということ自体、絶対に許してはいけません。セブン銀に直接的な損害がないから関係ないという話ではない。不正対策はお金がかかってもやろうということでやってきましたし、これからも間断なく続けていきます」

 問 地方銀行などの間で、自前のATMをセブン銀ATMに置き換える動きが出ています。

 答 「銀行経営は大変な局面にあります。でも、例えば自前のATMを最小限にして、採算の合わないところがあったらやめようとすると預金者が困ります。そんな時、うちのATMだったらそのまま設置し続けることができるんです。なぜかというと、収支構造が違うからです。例えば、とある地銀が自前でATMを設置したとしましょう。しかし利用者のほとんどは自行の預金者でしょう。他行預金者の利用は限定的で手数料があまり入らずコスト部門になります」

 「うちのATMを利用すれば、どんなお客さんが使っても手数料が入ります。そうなると運営コストは全く違うんですよね。特にセブンイレブンの中にあるATMは売上金入金の仕組みもあるので、維持管理のコストが圧倒的に低くなります。仮に提携先の銀行が自前のATMを置けないような場所でも、セブン銀のATMなら置けるところもあるわけですよ。私たちは、顧客である銀行がネットワーク戦略を見直すためのソリューションを提供しているんですね」

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