武田薬品工業と時価総額で業界首位の座を争うアステラス製薬。海外大手とは一線を画する独自路線で2016年3月期は最高益を更新した。畑中社長は自らの仕事を「次の世代に何を残すかを毎日考えること」と話す。
(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

変わることでしか会社の安定は得られない。
会議では提案者の思いと覚悟を見ている。
問 高額医薬品の「オプジーボ」が話題になっています。社会保障の範囲でどこまで負担すべきと考えていますか。
答 革新的な医薬品の価格には、患者や社会にもたらす価値が十分に反映されなければなりません。その価値は科学的なデータによる裏付けが必要です。これがまず前提になりますが、とにかく良い薬を作ればいいというわけではありません。医薬品メーカーは各国の医療システムの中で存在していますから、その持続性に注意を払う必要もあります。
長期にわたって研究開発をしなければならない製薬企業の立場からすれば、革新的な医薬品を開発できた際には正当に評価していただきたいと考えています。また、一定の期間は知的財産を保護してもらいたいという要望もあります。ここが担保されないと、長期にわたって研究開発投資を続けるリスクは取りづらい。
今は高額医薬品の価格にだけ焦点が当たっていますが、もっと幅広い意味で負担と給付のバランスや、医療費を含めた社会保障に関する世代間の公平性といった一段高いところから議論していかなければならないと思います。
問 確かに高額医薬品の保険適用が広がると、社会保障のあり方まで考えなければならないでしょうね。
答 高額医薬品については日本以外でも議論になっていますが、考え方は国によって様々です。個人的には一定の負担でユニバーサルな社会保障を受けられる日本の仕組みは理想に近いと思っています。国民皆保険のおかげで日本は世界有数の長寿国になりました。高齢化が進む国にとって、日本の姿には示唆が多く含まれているはずです。ただ、日本の社会保障制度が経済成長を前提に設計されているとすれば、今の形で存続するのは難しいでしょう。
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