中国子会社が起こした不正会計問題の後、工具通販MonotaRO(モノタロウ)から招聘された。無駄の排除と現場主義で社員の意識改革に奔走。プロ経営者として業績を1年でV字回復させた。プリンシプル(原理原則)と勝負にこだわり、次の成長への基盤固めを急ぐ。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
PROFILE
[せと・きんや]1960年生まれ。83年東京大学経済学部卒業後、住友商事に入社。96年に米ダートマス大学でMBA(経営学修士)を取得。2000年に工具通販のMonotaRO(モノタロウ)を設立、12年に会長。モノタロウを含め国内外で11社の創業に携わる。16年1月から事業会社LIXILの社長兼CEO(最高経営責任者)に就任。同年6月から現職。学生時代はバスケットボールやボクシングに打ち込んだ。

人は誰しも自分が属する組織に愛情を抱いている。
その気持ちを素直に出せる職場にしたい。

 問 LIXILグループの社長に就任して1年が過ぎました。2017年3月期は過去最高益で足元の業績も堅調です。短期間でのV字回復の要因は何でしょうか。

 答 まず僕はラッキーだということです。いろいろな会社で事業をやってきましたが、周囲の助けや環境に恵まれているんです。逆に言えば、この会社は過去5年ほど、アンラッキーなことが多かった。震災や工場の雪害、タイの洪水……。もちろん、中国の問題(編集部注:買収した独水栓金具大手グローエ傘下の中国子会社ジョウユウでの不正会計問題。累計660億円の特別損失を計上し16年3月期は最終赤字に転落)は自分たちが悪かったのですが。

 この会社に来て最初に思ったのは、11年に5社(トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリア)が統合して生まれ、海外企業も積極的に買収していたので、そもそも経営が難しいということです。統合効果を十分に発揮する前に、次に次にと進んでしまって不具合が出ていました。例えるなら、バケツにたくさん穴が開いているような状態でした。

原則は「正しいことをやる」こと

 問 まずはバケツの穴を塞ぐことから始めたのですね。

 答 経営効率が非常に悪く、組織的にも膨れ上がっていたところを、まずはきれいにしました。一番大きな穴は無駄遣いです。経営統合や海外展開のためにコンサルタントをたくさん雇っていたり、難易度が高過ぎて破綻しかねないITシステムを作りつつあったり。こうした無駄遣いはやめました。組織についても、なんでこんな部門があるのか、なんでここに重役がいるのかという視点で見直し、114人いた役員を53人に減らしました。

 社長就任当初、『瀬戸さんの目的はなんですか』と聞かれた時、僕は『一番の目的は社員が楽しく誇りを持って仕事ができるようにすること』と答えました。バケツの穴を塞ぐのは、その前提条件です。一生懸命働いても、穴から水が漏れていたら楽しくないでしょう。

 問 無駄な仕事や組織でも、必要だと考えている社員もいたと思います。決断に迷いはありませんでしたか。

 答 僕には物事をやる時のプリンシプル(原理原則)があって、それがドゥ・ザ・ライト・シングなんです。いろいろな理屈やしがらみがあっても、正しいことをやると決めたら迷いません。当然、無駄だと判断された部門の人は、反対します。それが自分の存在意義だから。しかし、本当にコストに見合っているのかを考えなければいけません。

 ただし、これらは応急手当てで、大切なのは社員のマインドを変えることです。そこで、クイックウィン、つまり短期的に勝てることから着手し、それがある程度うまくいきました。

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