クラウドサービスの旗手として知られるが、直近では、AI(人工知能)の動きが目立つ。AIベンチャーの買収を今年2件まとめ、トヨタ・リサーチ・インスティテュートにも関わる。クラウドビジネスの巨人は、第4次産業革命の先に何を見るのか。

(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

(写真=的野 弘路)
PROFILE
[Marc Benioff]1964年カリフォルニア州出身、51歳。79年、15歳の頃に友人とゲーム会社を立ち上げる。南カリフォルニア大学在学中には、米アップルへのインターンでソフトウエア開発に携わる。卒業後、86年にオラクル入社。上級副社長を務めたが、99年に退社し、サンフランシスコのマンションの一室でセールスフォース・ドットコムを創業。「ソフトウエアの終焉」を提唱し、クラウドサービスの先駆けとなった。

戦略的にリスクを取らなければ成功しない。
AIの普及で日本国内の雇用はむしろ増える。

 問 セールスフォース・ドットコムと提携しているトヨタ自動車がAI(人工知能)の研究開発子会社、トヨタ・リサーチ・インスティテュートを米国に設立しました。ベニオフさんは、アドバイザリーボード(外部有識者による助言組織)にも名を連ねています。トヨタがAIを開発する意味をどのように捉えていますか。

 答 最も重要なのは、コネクテッド・カー(つながるクルマ)あるいはコラボレーティブ・カー(協調するクルマ)と呼ぶべき概念です。これはトヨタとセールスフォースが業務提携を始めた5年前に考え出したコンセプトです。トヨタの開発思想の大きな転換点になったのではないでしょうか。

 クルマはドライバーとつながり、工場とつながり、ディーラーとつながるようになる。例えばドライバーのカレンダーと連動してスケジュールを自動更新するサービスができるようになる。ドライバーの生化学データを取って、健康管理もしてくれる。こういった機能が次世代のクルマには盛り込まれていきます。クルマは全く違ったものに生まれ変わるのです。

 EV(電気自動車)メーカーの米テスラモーターズは従来の自動車の流通モデルも大きく変えていますね。ディーラーを介さずに、インターネットで直接販売しています。最近、私もテスラの『モデルX』を買いました。自宅のあるオークランドから会社のあるサンフランシスコまで(運転操作を一部自動化した)『オートパイロット』にほぼ全てを任せることができます。とても素晴らしい機能です。