職・住・遊のノウハウ蓄積

 問 森ビルは、これまで外資系企業の誘致を得意としてきました。秘訣は何でしょうか。

 答 六本木ヒルズも虎ノ門ヒルズもテナントの半数以上が外資系です。三菱や三井、住友などのようなグループ会社を持たないことが背景にあるかもしれません。しかし外資系企業を誘致するための街づくりをしてきたという側面は確実にあります。外資系を呼ぶには、オフィスビルだけではだめで、住宅やお店をそろえる必要があります。虎ノ門再開発でも、建設するビルの一つは住宅棟で約600戸を供給します。ホテルも2つ目を誘致します。

 外資を意識した住環境の整備には歴史があります。1986年に開業したアークヒルズには賃貸マンションを併設しました。これは国内の高級賃貸の先駆けで、フロントサービスやスパなども全部整備しました。当時は手探りでしたけれど、その辺のノウハウを蓄積しているという自負はあります。

 問 東京では大規模再開発が増えています。アークヒルズを開発した30年前とは何か違いますか。

 答 地権者との交渉の難しさそのものは変わりません。しかし再開発を終えた街で、もともとの地権者がどのような権利を持ち続けられるのか、アークヒルズや六本木ヒルズで前例が示せるようになったことは間違いありません。地権者と合意形成を得るという点で交渉のスタートラインが変わりました。

 問 今後は六本木から虎ノ門へ経営の軸足を移していくのでしょうか。

 答 いえ。森ビルは両地域を含む港区を戦略エリアとして定めています。港区は在京大使館の半数があり、ホテルや文化施設も充実している。インターナショナルスクールもあり、グローバル化が進む中では、非常に魅力的な立地だと考えています。当社の手掛けた『ヒルズ』が核となり、その周辺の開発が進んだ。過去20年で港区のオフィス面積は圧倒的に増えています。

 問 港区にはすてきなレストランも多いですしね。

 答 そうなんです。ミシュランガイドで星を持つ店が港区には85店もあります。銀座がある中央区を上回り、日本一です。米ニューヨーク全体でも76店舗ですから、この点でも非常に競争力のある地域と言えます。

 問 オフィスビルと一緒に文化的施設を整備するなど、これまで特徴のある開発をしてきました。

虎ノ門の再開発計画では、オフィススペースのほかホテルや商業施設を充実させる(写真=上:陶山 勉)

 答 亡くなった前社長の森稔は『ヴァーティカルガーデンシティ(垂直庭園都市)』という構想を持っていました。中心となるビルを高層化する。地下空間も利用する。そうすることで周辺に広い緑地スペースが確保できる。建物の屋上も活用し、緑があふれる空間を増やす。さらには、建物にオフィスだけでなく商業施設や文化施設も入れる。複合的な機能を持つコンパクトシティーを造るというのが森ビルのコンセプトとなっています。

 アークヒルズ、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズなどでこうした再開発をしたことで、森ビルを名乗らなくても当社が造った施設だと分かっていただけるようになってきました。前例のない街づくりだから当初は奇異の目を向けられましたが、貫き通したことで人々の記憶に残るようになっていると思います。それぞれのエリアのランドマークとなり、街そのものを変えることができるのです。

 問 日本では地震対策が都市開発にとって避けて通れないテーマです。

 答 森稔の街づくりのコンセプトには『逃げ込める街』というものもあります。災害が起きた時に人々が逃げ出すのではなく、逃げ込めるようにするという考えです。実際、六本木ヒルズは食料備蓄などもしています。東日本大震災の時に六本木ヒルズは帰宅難民の受け入れも表明しました。災害情報を日本語と英語の2カ国語で流したため、外資系のテナントからは非常に喜ばれました。虎ノ門の再開発でもこのコンセプトを徹底します。