大型買収や安値攻勢は仕掛けない。急成長は望まない。こだわるのは「まねされる商品」。顧客が満足するトイレのためにはスーパーコンピューターも使う。創業者の理念をよりどころに、次の100年を生きていく。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=陶山 勉)
PROFILE
[きたむら・まどか]1957年生まれ。福岡県出身。81年長崎大学経済学部卒業、東陶機器(現TOTO)に入社。経理部門、グループの製造会社や販売代理店の経営などに携わる。2006年執行役員経営企画部長。08年に浴室事業部長に就任し、当時赤字だった同事業の立て直しを主導。11年取締役常務執行役員を経て14年4月より現職。

規模拡大狙う買収は、全く頭にない。
堅実に伸ばしたほうが100年後も生き残れる。

 問 5月15日に創立100周年を迎えました。世界的なメーカーに成長した原動力は何でしょうか。

 答 当初の社名を東洋陶器(2007年にTOTOに改名)に決めたのは、東洋に西洋並みの水回り環境を整備させたいという大倉和親はじめ創業者らの思いがありました。東洋西洋を問わず海外へ積極的に製品を輸出したいという願いも込められていました。その志が代々受け継がれてきたのだと思います。

 大倉が後進に残した書簡はおおむね次のような内容でした。『良品の供給、需要家の満足がつかむべき実体。利益という影を追えば一生実体を捕らえずして終わる』。私で16代目の社長になりますが、顧客の満足を最優先する企業理念を守り続けたからこそ、会社が存続できたと考えています。

 問 この書簡が社内で引き継がれてきて、経営者として立ち返る原点にもなっているわけですね。

 答 はい。実はこれは創業者が次の社長に送った書簡です。ちゃんと理解している人間じゃないとTOTOの社長は務まりません。これとは別に社員を念頭に置いた『愛業至誠』という社是があります。意味は、良品の供給と需要家の満足を目指す中で、『まず自分の仕事を愛する、誇りを持つ。そうすれば必ず正しい道に行きますよ』ということなんですね。

(写真=陶山 勉)

 とにかくお客さんにとっていいものを作りたい。私たちが提供する商品は10年、20年と使われるものがほとんどです。大事なのは、売って終わりではなくて、選ばれてからのお客さんとの絆であり、それを担保できる品質やアフターサービスです。

 だから『米国でもっと売れ』なんて投資家からよく言われますが、アフターサービス体制をつくる方が先なんだと言い続けてきました。もちろん急いでやっていますよ。でも、TOTOの商品を扱ったことのない代理店がいっぱいあるわけです。商品教育も十分にやらないといけない。