阪急阪神百貨店を中軸にして、主に関西で事業展開する、エイチ・ツー・オーリテイリング。 昨秋以降、そごう・西武からの3店舗取得や関西スーパーへの出資を相次ぎ発表した。 脱・百貨店依存を掲げ、業界再編の台風の目になりつつある。

(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

(写真=宮田 昌彦)
(写真=宮田 昌彦)
PROFILE
[すずき・あつし] 1956年生まれ。80年関西学院大学経済学部卒。同年阪急百貨店(現エイチ・ツー・オーリテイリング)入社。2000年SC事業部統括部長。2006年執行役員、2014年取締役、同4月より現職。

関西エリアを一網打尽にしたい。イズミヤに加えて、関西スーパーなど、食品事業の成長余力に期待。

 問 昨年10月、セブン&アイ・ホールディングスと一部株式を持ち合って提携するとともに、同社傘下のそごう・西武から3店舗を譲り受けることで合意したと発表しました。

 答 私たちは、徹底して関西におけるドミナント(地域集中)戦略を進めています。引き継ぐ予定の、そごう神戸店(神戸市)、西武高槻店(大阪府高槻市)、そごう西神店(神戸市)は、どれも私たちが、埋められていない場所にある店舗でした。

 セブン&アイとの提携を通じて、当社が発行する『Sポイント』がセブンイレブンでも使えるようになります。関西の約2000店舗で利用可能になるというのは願ったり、かなったりでした。顧客接点を増やす上で、コンビニエンスストアを押さえられるのは大きい。点が一気に面になります。

 問 博多阪急(福岡市)や、東京・有楽町の阪急メンズ東京など、関西以外にも店舗を持っていますが、今後は関西以外では店を増やさない戦略ですか。

 答 我々は、阪急電車が走っていて、阪神や阪急の名前を知らない人はいない、というエリアに重点投資します。電車の沿線で考えると、西の端と東の端に抜けがあった。それぞれ神戸と高槻ですね。そごう・西武から店舗を取得することで、その地を押さえることができるのですが、その業種がたまたま百貨店だったということです。

 例えば(そごう・西武が店舗を展開している)福井や広島で、当社が店を運営できるかというと、そこまでの自信はありません。百貨店事業が低迷していることは確かですから。立地を押さえたからといって勝てるとは思っていません。店舗ごとに適したMD(商品政策)やマーケティングが重要になってくると思います。

承継店、建て替えも視野

 問 3店を承継する時期は、いつになりますか。

 答  2017年中には承継しようと思っています。2年も3年もかけてやるものではありません。ただ、承継直後は、まずはSポイントを使えるようにするといった部分的な変更にとどまる可能性はあります。取引先、従業員、顧客、この3つをしっかり考えた上でやるという話になると、どうしても、それなりに時間がかかります。特に外商顧客や、ハウスカード所有者が多い店舗もあるので、その方たちを裏切らない方法も考えなければいけません。承継した後、どのような店にするかは、未定ですが、看板だけ『そごう』『西武』をはずして『阪急』にすればいい、といった簡単なものではないのです。

 問 店舗によっては建て替えの可能性もあるのでしょうか。

 答 当然、建て替えも視野に入っています。例えば、そごう神戸店は、店の古い部分は、80年以上たっています。阪神大震災を乗り越えて、だましだましで、やってきている面もあるのでしょう。

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