ブームはゼロから作れない

 僕がマーケティングで重視するのは、「ブーム」になりそうなものを探すことです。何もないゼロの状態から様々なことを考案し、ブームを生み出すことははっきり言って困難です。

 例えば、僕は「カフェブームの立役者」と呼ばれていますが、最初のカフェ「OFFICE」を手掛ける前に影響を受けた素晴らしいカフェが都内にあり、僕はその後追いでカフェを始めたにすぎません。それでも僕が、カフェブームの立役者と呼ばれているのは、ブームを生み出した店として世間は、最初に取り組んだ店だけでなく、2番手と3番手の店までは認めてくれるからです。一方、なぜか4番手、5番手と見なされるとブームを生んだ店には該当しません。マスコミへの露出量や当社への評価も変わってきますから、2番手、3番手になれることを素早く見つけることが大切になります。

 また、海外や地方では既にはやっていても東京ではまだはやっていないものを持ち込むことでもブームを作ることはできます。

東京・中目黒にある人気うどん居酒屋「二〇加屋長介」の料理。福岡・博多でブームのうどん居酒屋を東京に持ち込んで人気店にした

 例えば、福岡市のうどん居酒屋「二〇加屋長介」は地元ではうどん居酒屋ブームの先駆けとして知られている店です。昨年秋、当社が運営を引き受ける形で、東京・中目黒に東京1号店をオープン。連日、満席です。

 ブームと同時に意識しているのが「スタイル」です。「スタイル」とはブームとしては沈静化した後に、生活の一部として定着した状態のことです。ブームよりもスタイルになってからの方が商売としての引き合いが多くなります。例えば、当社の場合、カフェブームが終わってから、ブランド力の高い様々な大手企業からカフェの運営の依頼が舞い込むようになりました。ブームで終わらず、スタイルとして定着しそうなものを探すことが一番望ましいと思っています。

ヒットの火種を探す

 そうした視点で膨大な情報の中から、「目利き」として探しているのが、まだ注目されていないブームの「火種」です。僕は常時100くらいの「火種」が頭に入っています。一つひとつは小さな事柄ですが10、20とつながってくるとブームを生み出す要素になっていくと考えています。

 例えば、台湾の人気かき氷店「ICE MONSTER」を振り返ってみます。当時、雑誌などの情報から、台湾の人気が高まっていると感じていました。これも火種の一つです。そして、「ICE MONSTER」の台北にある本店は行列が絶えない人気店です。一方、東京・六本木のかき氷店が話題になっていました。

 六本木で話題になるということはかき氷が注目される可能性があり、「行列」ができることはブームの火種として有力です。さらに同店が東京に店を出せば、「日本初上陸」にもなります。この日本初上陸もブームを起こしやすい火種の一つです。

 「ICE MONSTER」の件には20くらいの火種があると感じて、日本への出店を交渉することにしました。火種の数は多くて、それが大きいほど、ブームを起こしやすいと思っています。

 なお大前提として飲食店の場合、僕が一人のお客として食べておいしいと思うことも条件です。本当にうまくいくのか、メーンのお客となる女性の意見を聞くために、女性社員の意見は重視しています。また、当社のナンバー2である垂水謙児副社長には採算面を厳しくチェックしてもらっています。

雑誌の見出しをイメージする

 こうしたハードルを越えて、晴れてプロジェクトが始動する際に僕はキャッチコピーから考えることにしています。キャッチコピーは、雑誌で取り上げられるとしたら、どんな見出しで取り上げられるかを意識して、そこからの逆算で考えます。そうすることでメディアからも取材をされやすくなるからです。

 コンセプトもキャッチコピーからの逆算で考え、同時にネーミング(飲食店なら店名)も考えます。コンセプトは簡潔なものが理想です。そうでなければ、従業員も理解ができませんし、お客が友人・知人に話しにくいのでクチコミも生まれにくくなってしまいます。

キャッチコピーから考える
●キャッチコピーの例

 そしてコンセプトとネーミングが決まったら、具体的なコンテンツを考えていきます。上の図は、これまでに考えたキャッチコピーの例です。また下の図は最初の店「OFFICE」を作るときに実際に僕が考えたコンテンツの一部です。

コンテンツは多いほどよい
●「OFFICE」の例
カフェ「OFFICE」の店内。最初から話題作りを重視し、2001年にオープンした
  • ▶仕事ができる
  • ●ノートとペンがある
  • ●ファクスが送れる
  • ●コピーが取れる
  • ●電源がたくさんある
  • ●深夜営業している
  • ▶ブレストができる
  • ●話題の本や雑誌がある
  • ●クリエーティブな洋書がある
  • ●いい音楽が流れている
  • (気になったら直接曲名をDJに聞ける)
  • ▶クリエーティブな空間がある
  • ●インテリアデザイナーを起用
  • ●グラフィックデザイナーを起用
  • ▶ユニークなメニューがある
  • ●残業セットがある
  • (焼きおにぎり+味噌汁+おしんこ)
  • ▶友達が作れる
  • ●キャラ立ちスタッフがいる
  • ▶事務所がある
  • ●中村氏の社長室を設置
  • ▶面白いトイレがある
  • ▶昼間はロケ場所として使える